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一年後、俺は焼け跡となった母校に来ていた。
あのあと炎は燃え広がり、古い校舎を何一つ残さずに焼き尽くしていった。
唯一無事だった体育館で卒業式が執り行われたが、学び舎の面影もない校舎の目にして、生徒たちは悲しみの涙を流すばかりだった。
一年経った今でも、瓦礫の撤去作業は進まないままだ。
俺は感覚を頼りに、あの時、生徒や教師を全て出口へと導いてから、炎に飲まれていった誘導灯を探すことにした。
暫く歩くと、見慣れたものが視界にちらついた。
地面に虚しく横たわっている誘導灯は、頭上に会った頃よりも随分と大きく見えた。その中に、目的のものを、見つける。
走る格好をしたピクトグラム。嘗ての俺の友人である、ピクトさんだ。
だが、ここにもう彼はいない。
恐らく、この世のどこにもいないのだと思う。
それでも俺がここに来た理由は、伝え切れなかった言葉を、ちゃんと伝える為だった。
俺は誘導灯の煤を払うと、明かりも声もない、ピクトグラムに触れた。
「俺もピクトさんのおかげで、学校楽しかったよ。元気でね。……さよなら、ピクトさん」
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