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思い出は美化される
妹も兄も、いい年齢になった頃。
他の家族の兄弟について話題になった。
「クラブの先輩が言ってたけど、お姉ちゃんと携帯の連絡先交換なんかしてないんやって」
「そーいえば、俺んとこの同級生も、妹がヤンキーになって怖くてはなしかけられへんようになったって言ってたわ」
「ふーん」
「それに比べたら、俺らって仲良し兄妹やったでな?」
兄の、突然の一言に妹の頭はクエスチョンでいっぱいになった。
仲良し兄妹やったでな? 頭の中で反芻する。
「へっ?」
「ん?」妹の反応に、今度は兄がクエスチョンマークを浮かべている。
妹は、心の中で兄の言葉を全力で否定した。
いやいやいやいやいや、今でこそ仲良しやけど
あんたの反抗期、エグかったやん。
何忘れてねん、ええ加減にせえよ。
今でこそ、落ち着いたけど
あんたのせいで、こっちは何時間トイレにこもったと思ってんねん。
暑い日も、寒い日も
妹は、トイレに鍵しめてワンワン泣いとったわ!
それやのに!
あんたは、しつこくて、トイレの鍵を、わざわざ十円玉持ってきて
開けようとするは、トイレの電気をブレーカーから落として
なんとか、妹をトイレから追い出そう、追い出そうとする。
まだ、トイレが家に一個しかないんやったらわかるけど
うち、家に二つトイレあるやろ!
トイレ行きたいんやったら、上のトイレいけばええやんか!
なんでそんなしつこいねん、ってなんべんも思ったわ。
きぃーーーーーー
思い出しただけでも、ハンカチかみちぎりたくなるわ!
ま、せやけど
この世でたった一人の兄ちゃんや。
お世話になってるところもあるから
話は合わせといたるわ。
「そやな、仲、良かったと思うで」
何とか声を振り絞って、返事をしたら
「うんこか?トイレやったら、はよいきや」
きばってるわけやないっちゅーねん!
メモ:兄妹喧嘩をして負けた方は、トイレに籠城する。
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