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『俺…何で?』
優しく声を掛けてくれているのは彼女ではない。
『連絡があって、びっくりよ。
レイの番号だったから珍しいなんて思って出たら麻依さんで…倒れたって聞いたの。』
話しながら額の汗をタオルで拭いてくれている。
俺は七海の腕を掴むと
『自分でやるから。』
とタオルを奪った。
このままじゃ、いつか倒れるんじゃないかって自分でも思っていた。
でも、よりによってこんな時じゃなくても。
麻依さんは?
周りを見回した。
『過労だとよ、全く親子で病院なんて、勘弁してくれよ。大したことなくて良かった。
おまえ飯もろくに食ってないんだろ。ったくよ、うちに来いって言ってんだろ。
退院したら飯は店で食うように、命令だ!』
口調はきついが優しい顔つきの健じいにうんと微笑む。
いつもの健じいだ…
良かった。
『健じい、ごめんな。親父のこと…』
目を逸らせないほど強く見つめる健治の瞳は穏やかでそんな彼は
『何いってんだ、こうやって会えたんだ。なっ司。』
横を向き話し掛けている。
『はぁ?親父と同じ病室かよ、勘弁してくれ!』
トントン、ガラガラ…
そのノックの音に俺の高鳴る鼓動は、麻依さんだと期待していた。
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