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「でも、どうして急に髪を短くしようと思ったんですか?」
南さんが一旦ハサミを止めて、尋ねて来る。過去を想起している間に、あやうく眠ってしまいそうだったので、丁度良いタイミングだった。
「これは、賭けです」
「え?」
「彼女の言葉が、本当かどうか試すために」
真っ黒に染まった地毛を見ながら、ぼんやりと考える。
周りの目とか気にせず、ありのままの自分を見せてみたら。そしたら今度こそ、彼女は俺を綺麗とは言わなくなるだろうか。
意地悪くて汚い姿になり、覆い隠すものを全て失ってから、打ち明けるのだ。
「ごめんね」それから「恋人になってくれませんか」
どこにも行かないように抱き寄せたい。
綺麗な君の、そばにいたいのだ。
end
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