プロローグ

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こうして分かりやすく天狗になった小学生時代。またの名を暗黒時代。将来の夢は、女優かモデルだと、みんなの前で宣言し、漫画の主人公にでもなったように自慢していたのである。しかしその後、合計2回の壁にぶち当たった。  第一の壁は、五年生に学年が上がって、すぐに現れた。肌が白くてくっきりとした二重を持ち、それでいて垂れた目尻が可愛らしい。すらりと細くて動作の全てに愛嬌がある。愛されるために生まれてきた、と言っても過言では無い。髪と瞳の色を変えれば、フランス人形と間違えてしまいそうだ。……それと、性別と。その男の子はぺこりとお辞儀をした。 「西小から来ました、城田柚です」  少年は緊張した顔で、ぐるりとクラスを見回す。彼の名前を初めて聞いた時、ある記憶が蘇ってきた。 「ねぇ、柚子って何?」 「柚子は、蜜柑の親戚みたいなものよ」  そう言って、鈴木のおばちゃんが教えてくれた事があった。誕生日に何が欲しいか言われて、綺麗な花が欲しいと、はまっていたドラマのヒロインの真似をしてお願いしたら、まさかの植物図鑑が渡されたのである。興味のない写真を眺めていると、唯一柑橘類のページだけ好奇心をくすぐられた。表面がつるつるで瑞々しくて、丸くて綺麗だ。 鈴木のおばちゃんが蜜柑をくれるのは、私が可愛いからである。何故かこの方程式に囚われていたせいで、蜜柑は可愛い女の子のものだと思い込んでいた。じゃあ、柚子が親戚なら? 「男子なのに、女の子みたいな名前。変なの」
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