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「志望動機を教えていただけますか?」
「学費のためです。あと、髪色が自由だと求人に書いていたので」
「前のバイトは、何をしていましたか?」
「同じく接客業です。あと、派遣のバイトをいくつか……」
目の前の女性が、手元の紙へとメモしていく。机を挟んで向かい合っていると、就活を思い出す。視界が少しだけ歪んでみえた。
「はい、ありがとうございます。では、最後にシフトの件ですけど」
「基本的に毎日、放課後と空きコマの時間に入れます」
あ、でも…と付け足す。
「実習が入ると、1週間ぐらい顔を出せないかと」
「どのくらいの頻度ですか?」
「長い休み期間にあります。夏休みが特に多いです」
すると、何が可笑しかったのか、面接担当の女性が、嬉しそうに笑った。
「何か、変な事言いましたか?」
「いえいえ、ただとても素直だと思って」
「素直?」
「包み隠さず言っていただけると、こちらも助かりますし、気持ちが良いですね」
「あ、ありがとうございます」
褒められているかは分からないが、一応礼を言う。気分が沈んでいたせいか、些細な褒め言葉でも、胸にしみた。
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