プロローグ

1/1
前へ
/4ページ
次へ

プロローグ

「この浜を見ると憂鬱になるわね」 「毎年こんな感じなんですか?」 「そうよ、優くんも頑張って」  秋の声が聞こえる、とある日曜日の夕暮れ、札幌から北に20キロ程の石狩親船ビーチには、海水浴とキャンプに来る人たちが残していった、花火の燃えカスや、空き缶、空き瓶といった、ある意味定番のゴミが砂浜に散乱していた。  私は5歳の頃から20年ほど、毎年親戚が経営する海の家でバイトをしている。優くんは今年初めてバイトに来た高校生で、一緒に仕事をする機会も多かった。まだあどけなさが残る可愛い子で、不思議と私に懐いてきてくれたので嫌いではなかった。  私も彼も、札幌からバスで通っていて、時折一緒に乗ることがあった。私は街中、彼は郊外の停留所から乗るので、たまに会うと一緒にお話をしたりしていた。  そんな日々も今日で終わり。一緒にゴミをトングで拾っては袋に詰めていた。  黙々と作業を進める中で、優くんが私に尋ねてきた。 「ところで、なんでここにはゴミ箱が無いの? あれば少しは楽になるのに」 「それはね、みんなにゴミを持ち帰ってもらうためよ」 「どうして? こんなになってるのに」  確かに砂浜にゴミが散乱している光景はあまりいいものではない。だがそこには管理者のポリシーがある。私はやや強めの口調で語り始めた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加