3人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはようございます。」
マチコさんが元気よく挨拶して出勤する。
「おはようございます。今日は寒いですね」と同期の山田が声をかける。
「….........」早くもカチカチと仕事に取りかかる。
無言...。山田は俺の方をみて両手を顔の横に上げて、ダメだこりゃ。とリアクションをする。
俺は必死で笑わないようにこらえるが、口元がピクピクしてしまう。
止めてくれよ!山田!と俺も負けずと無言のリアクションをする。
山田はどうしてもマチコさんが気になって仕方ないようだった。
マチコさんは、1ヶ月前からうちの会社に派遣されてきた。
年齢は30代前半とみた所だろうか。
顔はとても美人でクールビューティーと言ったどちらかというと、フランス人形に似ていた。無表情で全然ニコリともしない。
派遣で働きはじめた時は、男性社員がことある毎に話しかけて距離を詰めようと必死だった。
いつも無表情で仕事以外の会話はしない。
他の男性社員は、もういいとあきらめたが、山田は今だに近づこうとしている。
俺はよくやるな。と心の中で思う。
マチコさんは、仕事も一流だ。何も言わなくても一つの指示をしただけで、その先の先までこなしてしまう。
俺は、一緒に働くうちに笑いはしないが、
愛着が湧いてきていた。
マチコさんがいるだけで落ち着くのだ。
通常業務や他の雑用なども行いながら働く、マチコさんは素晴らしい。
ある時、人間関係で悩んでいる新人社員がいた。
噂にはならなかったが、密かにマチコさんが解決したようだ。
僕は、色々なやつから細かな情報が集まる。
その他にもマチコさんが間に入って解決した人間関係は多く僕の耳に入る。
その内、僕の中では、『お掃除屋のマチコさん』と名前が付いた。
今日も、マチコさんのおかげで幸せに働ける。
ありがとう。
ーコンコン
「失礼致します。」
マチコは社長室に入る。
「社長、全社員のリストが出来ました。」
社長室の机にまとめたリストを提出し、一歩さがる。
「おおっ。ありがとう。さすが、仕事が早いな。君を潜り込ませててよかったよ。」
窓の外を眺めていた社長がリストに目を通す。
「これがうちの社員のリストラリストか。」
「はい。」
「上手く進めてくれよ。」
「はい。承知しました。」
マチコは向きをかえ社長室を後にする...。
社長室から出るマチコは、不敵な笑みをうかべた...。
最初のコメントを投稿しよう!