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太陽と月のあいだで
しゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわしゅわ。
蝉が猛っている。
しゅわしゅわ鳴くのはクマゼミだ。主に午前中に鳴く。ミーンミンミン、とミンミンゼミの声もかぶさってゆく。
ジリジリジリジリジリジリ。アブラゼミもいるらしい。不透明な羽を持つアブラゼミは、世界的に見ればかなり珍しい種類の蝉だ。
幼い頃、家族で訪れた湿原で父が教えてくれた蝉の知識をひとつひとつ思い返しながら、陽炎の立ちそうなキャンパスに歩を進める。この大学の在籍生徒数と、敷地内の樹々に鳴く蝉の数と、いったいどちらが多いのだろうと考えながら。
汗が顎の下で数秒留まり、ぽたりと落ちて地面を打った。
みんなの制汗デオドランドの香りがはじけ飛び、酸素濃度が少し低い。
誰もが夏休みの甘苦しい空気感を引きずっている。
教授が入ってくるまでのひととき、エアコンが吐きだす黴くさい冷気と学生たちのざわめきが充満する講堂の隅で、わたしはただひとりの友人が来るのを待っていた。魚のように、息を潜めて。
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