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悔しいくらいよく覚えている。
背が高く、嘘みたいに顔の小さな、モデルのような二人組だった。ひょっとしたら本当にモデルだったのかもしれない。ひと目で高価なものとわかる衣類に身を包んで校門に寄りかかるようにして立っていた彼らは、新館を出入りする女子たちに点数をつけていた。
「60点……75点……40点……」
わたしの前を歩いていた女子3人組は、顔を見合わせた。彼女たちの耳が羞恥と困惑で真っ赤に染まるのを、わたしは見た。
「おっ、95点。久々のヒット! お姉さん、ねえねえ、自分でも美人って思うでしょ?」
新館から出てきた髪の長い女子に絡んでいる彼らの視界に入らないように、わたしは鞄を抱えて校舎にダッシュした。震える脚を必死で動かした。今にも転倒するかと思うほどぎこちない走りになった。
「んー、62点」という声と下卑た笑いが、背中に突き刺さった。
彼らのことはその後も校舎のあちこちで見かけ、脚がすくんだ。もしかしたら当時4年生だったのか、今年度に入ってからは見ていない。
それでも、新館を出入りするたびにあの恐怖が蘇ってしまうのだ。
──そんなことは、今隣を歩いている彼には言う必要がない。自分の闇に誰かを引きずりこみたくはない。それだけが自分のささやかなポリシーだから。
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