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そうなのだ。
入学後、クラスの語学の授業で隣り合ったわたしたちは、どのサークルに入るべきか意見交換しながら仲良くなった。
「天文サークルみたいなのって、あるのかなと思って」
夏月の生い立ちを知らずにそう言ったわたしを、夏月は砂漠でオアシスを見つけたような目で見たのだ。
ふたりとも太陽系が好きだった。土星の環の寿命が2億年であること。水星の軌道は完全な円ではなくぼこぼこであること。火星は岩や土が酸化鉄を含むから赤く見えること。木星の衛星に降り注ぐ鉄の雨のこと。それぞれの人生で獲得した宇宙についての知識を答え合わせするかのように披露し合うたび、互いへの信頼と予感めいたものが生まれていった。
一緒にたずねあてた天文サークルの部室は、空気が真っ白に見えるくらい喫煙者だらけだった。まずはそれでくじけかけたものの、渡された活動案内のビラにあった天体観測ツアーにはふたりとも心惹かれた。
結局、活動のメインが夜だというサークルへの入会を彼女の養父が許可しなかったため、そのままわたしたちはどのサークルにも入らずに今に至るのだけれど。
「……あ、あと、好きな食べ物はチョコミント系です」
焼肉とかラーメンとか親子丼とか、好きな食べ物はいろいろあるのに、いちばんかわいく響きそうな単語をとっさに選んだ。そんな自分のあざとさに気づき、羞恥で耳たぶがかすかに熱くなる。
「チョコミント」
「はい。チョコミントアイスとか」
「チョコミントアイス……」
タカハシさんは遠くを見るような目つきでわたしの言葉を鸚鵡返しした。ブルーの眼鏡のブリッジにそっと触れている。
そして、
「一緒に食べに行っちゃだめかな、それ」
と自分の思いつきに興奮したような口調で言った。
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