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日向と外に出、グラウンド方面は他の運動部が使用してるので裏手で柔軟をしながら適当にそこら辺走るかと声を掛ける。
「日向ってスポーツ何か得意なのある?」
「知らねー……団体競技多くて嫌いなんだよ、スポーツ」
「確かにスポーツ団体競技多いな、日向って体格も良いし背もあるから運動出来たら色んな部欲しがるかもなんて思ってつい」
バレーだったらアタッカーに欲しいとか思う、1年の部員で日向くらい体格のある奴居ないし。
何て考えてるのがバレたのか日向はフッと笑う。
「勝手に妄想してんじゃねー」
「悪い。放課後っていつも何かしてんの?」
「放課後……は、別に。ゲームとか」
「ゲーム何やってんの」
「これ」
ポケットからスマホを取り出した日向に画面を見せられ、その見慣れたアイコンに思わず顔を上げた。
「マジ? 俺もやってる、面白いよなそれ」
「マジかよ、これやってる奴あんま居なくね」
まだ森くらいしかやってる奴見たことなかったのでこんなとこでユーザー見つけるとは、何か親近感湧いたわ。
あとでフレンドになるか、と言えば何故か日向は顔を反らし「いいけど」と呟く。良かった、拒否られるのかと思った。
柔軟を簡単に終わらせ日向に顔を向ければ、日向は何処かに視線を送ってる。
同じ方向に視線を向ければ、さっき行った部室棟だ。
「日向?」
「……ギターの音、聞こえねえか」
「ギター? ……あ、それもしかして七不思議ってやつ?」
「ああ? 七不思議?」
「何か部室棟の空き教室からギターの音がするって言う七不思議があるとかでさ、さっき行って見てきたけど何もなかったっすよ」
「何だそれ、聞いたこともねーよ」
俺もさっき初めて聞いたからな、七不思議。
俺は聞こえないけど、日向には聞こえるって耳良いんだなと適当なこと考えてから思い出した。
そう言えば日向って軽音部に入りたかったとか言ってた気がする。
まだ部室棟を見てる日向の腕を突付いて「何だよ」と微妙な顔を向けてきたので、部室棟を指差した。
「行ってみる?」
「は? ……走るんじゃねーのか」
「じゃあ部室棟まで走ってこうぜ、気になるんだろ?」
「……悪いな」
「いっすよ、こっちは筋トレに付き合って貰ってるんだし日向のやりたいことにも付き合うよ」
「そんな感じか」
「そんな感じ、行こうぜ」
2人で軽く走りながら部室棟に近づくと確かに何処からかギターみたいな音が聞こえてきて、日向に顔を向ければ「こっちだ」と顎で指して中へ入ってくので、追い掛ければどんどん音が近くなってくる。
素人が聞いても上手いなと思う音は聞いたことがない曲だ、流行りのでは無さそう。
日向が足を止めた部屋の前は、さっき森と来たゲー研の隣の空き教室だった。
さっきは音がしなかったのに、中から音が聞こえてきて少し背筋が寒くなる。
もしかして七不思議、マジ?
「ここか」
「ど、どうする? ガチの七不思議だったら」
「だから何だよ、七不思議って」
「七不思議なんて信じてるんだ」
「え、うお!?」
突然日向以外の声が背後から聞こえてビビって思いっきり振り返れば、その金髪に肩が入ってた力を抜く。
「み、道長くんか、こんちはっす……」
「よお、マサ。金曜ぶり」
笑みを浮かべる道長くんが何でこんな所に、いつから俺の背後にと思ってると、視線をツイと隣に移してクッと口角を上げた。
「誰、こいつ。トモダチ?」
「あ? お前こそ誰だよ」
「オレ? マサのコレ」
「え、コレってなんすか……」
親指を上げる道長くんに何それと思いつつ、「道長くんは先輩」と紹介しながら日向に顔を向けると不機嫌そうな顔をしてる。
何だ、同族嫌悪か?
不良と不良は仲悪いとか?
「えっと、道長くん、こっちは日向。一緒に放課後筋トレする仲」
「どんな仲だそれ」
「へー、お前がヒューガね」
「ああ? ……だったら何だ?」
「いや、別に何も?」
少しひりつく空気に、喧嘩したらどうしようとビビる俺、の肩に道長くんがポンッと手を置いてきた。
「で、マサはこんなとこで何してんの」
「ギターの音が気になってちょっと、七不思議とか聞いたし」
「この学園の七不思議なんて大体ホラばっかじゃん、七つも無いし」
七つもないのか、七不思議って大げさに盛ってるだけなのかも。
道長くんは一歩前に出、まだギターの音がするドアノブに手を掛けるとガチャと開け、そのままバンッと開け放つ。
「ほら、見てみろよ。霊とかじゃないから」
「え、……あ」
いきなりだな、とビビりながら日向とドアから中を覗くとそこには。
ギターを下げてビックリしたように固まってる、長身が。
そのボサボサの髪で顔の半分が見えない生徒は、ついさっき会ったばかりで。
「相内先輩、こんな所で何してんすか?」
相内先輩にそう声を掛ければ、辺りを見渡してから手招きしてきたので本日二度目となる空き教室に足を踏み入れた。
さっき入った時と同じ空き教室の室内には、相内先輩がギターを持って立ってるだけで他には何もなかったけど。
何でこんな所でギター持ってる相内先輩が、と首を傾げれば日向と道長くんも中に入ってきた。
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