熱烈!勧誘

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ぼけっとしてたら尻と股間を触られると猛くんに注意されたけど、ぼけっとしてたら股間を握らされてキスされるなんて現実はハードモードだな、と朝起きながら感触こそなくなったものの夢じゃないことを思い出しながらキツ過ぎんな、とベッドから抜け出して時間を確認すると、6時半。 2段ベッドの上を見れば人の気配はなかった。 陣先輩、帰ってこなかったのか、と制服に着替え準備してるとピンポーンとチャイムが鳴る。 こんな朝早くから来客?と思いつつ、軽く髪を整えてからドアを開けた。 「はい?」 「……おはよう雅也」 「わ、陣先輩どうしたんすか!」 開けた先には別れた格好のまま、如何にも疲れてますと言う顔で立ってる陣先輩がふらふらしながら部屋の中に入ると「あー」と呻き声を上げる。 「大丈夫すか?」 「大丈夫じゃねえ……」 ローテーブルに突っ伏す陣先輩曰く、カードキーを忘れてってしまい仕事が終わったのが深夜だったので俺が寝てるだろうかと思い知人の部屋に泊まらせてもらったらしい。 「泊まらせてもらう相手間違えたんだよ、うるさすぎて寝れねえし」 「寝言とか?」 「……雅也はいつも平和そうでいいな」 「馬鹿にされてるのか」 「してねえしてねえ」 「でも気を遣ってもらってすんません、電話の音なら起きる……あ、先輩と連絡先交換してなかった」 「あ、しろよ。あと写真もくれ」 覚えてたのか、と連絡先を交換してから渋々写真を送ると、陣先輩はにやにやしながら「サイズよ」と笑うので少し元気になったようだ。俺のぶかぶかジャージの写真でかよ、他ので出してくれ。 朝帰りついでに朝食を俺の分も買ってきてくれたようで、一緒にニュースを見ながらおにぎりを食べながら「それにしても」と声を上げてしまう。 「深夜まで働かされるなんて、委員会って大変なんすね」 「あー、学校の方針ってやつで、生徒で出来ることは色々やらせるし生徒間で起きたことは自分たちで極力解決させんのよ。んで、俺が委員長やってるとこはま、解決する委員会つうの?」 「へー、遠山の金さんみたいな感じか」 「遠山の金さんて。じじいかよ」 じいちゃんと昔一緒に時代劇をよく見てたからって答えるのが面倒臭くなり「そっすね」と適当に頷いてから、「だから先輩は一目置かれてるんだ」と納得した。 「イケメンだからってだけじゃなくて」 「イケメンなのもあんだろ、顔も体も良くて毎晩生徒のオカズにされてる遠山の金さんだぞこら」 「気に入ってる」 「何の問題も起きなきゃ仕事がねえ委員会なんだがねえ、今は無限に問題が出てくるんだよ。埃だってこんなに立たねえだろ」 はあ、とお疲れの陣先輩に、疲れてるイケメン多いなこの学校と思いながら「大変すね」と他人事のようにおにぎりをお茶で流し込む。 仮眠を促したけど結局寝なかった陣先輩と実は同じスマホゲームをやってたので時間まで一緒にやってから登校し、滞りなく過ごしてれば昼休み、4限目の片付けをしてた白川先生が「凩ー」と学食に行こうかと立ち上がったとこで声を掛けてきた。 「ちょっと教材運ぶの手伝ってくれー」 「え、何で俺」 「目に入ったから」 「腹減ったんすけど」 「昼飯奢ってやるから」 「運びましょう!」 勢いよく立ち上がる俺に三浦が「騙されるな、凩」と制すように手を上げる。 「学食も購買部も、払わなくても飯食えるぞ」 「は、マジじゃん。手伝うメリットないわ」 「先生、今日出前でな。焼き肉弁当だぞ、めちゃくちゃ美味い」 「ゴチになりまーす!」 焼き肉弁当って絶対美味いだろ、と教卓に乗ってる教材を持てば「くそ、凩が肉に釣られた!」「大人汚い!」とクラスの奴らが糾弾する中、白川先生はガン無視で「助かるわー」とだらしなく歩き始めた。 手伝うほどの教材でもないな、と思いつつ隣に並べば、「手伝うほどないんだけどな」と白川先生は頭を掻く。 「転校生って大変だろ、学園には慣れたか?」 「あ、そう言うやつか。まだローカルルールにはビビるけど、優しい人多いし何とか」 「ははあ、そうだなあ。うちのクラスの奴は割りと普通だから運が良かったんじゃないか? 聞いたところ、実はお前、転校前日まで隣に編入予定だったらしいし」 「え、そうなんすか?」 「おー、隣のクラスだったし部屋も今のとこじゃなかったらしいんだ、それがあとから転校決まった奴に場所取られたって感じか」 「初耳だけど……それ、先生が俺に言っていいやつ?」 そう言うのは生徒や本人に言わない方が良いんじゃなかろうかと逆に心配するけど、先生は「いーだろ」と緩く笑った。 「先生は問題児持たなくて安心してるから」 「あー、何か隣の転校生ヤバいらしいすね」 「秋津先生は何でか気に入っててそんな子じゃないとか毎朝職員会議で言ってて面白いぞ、疲れてんのかねえ」 へらへら笑いながら言うので、こう言うとこが教師としてどうなんだと思いつつ職員室に着き、白川先生は戸を開け俺から教材を受け取ると「ちょっと待ってろー」とだらしなく歩いて中に入ってく。 そしてすぐに弁当らしきものを2つ抱えて出てきた。 「ほれ」 「あざーす。わ、何か高そう……!」 コンビニ弁当とかじゃお目にかかれなさそうな風呂敷に包まれたそれを受け取り感動してると、「あ!」と言う声が聞こえ顔を向ければ、何処かで見たことある男が俺を指差して口をパクパクとしてる。 誰だっけ、と思う俺の耳に「どうした金井、うるさいぞー」と先生が言うので、金井、と反芻してすぐに昨日の大浴場で股間晒してきたおかしい人だと気づいた。 「お、同じ制服着てる……!」 「同じ制服着てる奴、他にもたくさんいるぞー」 「有象無象と、こ、凩雅也を一緒にしないでくれ!」 有象無象ときた、いや、何か昨日大浴場だからテンションおかしかった説あったのに、平時でもおかしいのか、じゃあずっとおかしいんだな。 おかしい金井さんとやらを見て先生は「ああ」と心底面倒臭そうに職員室の戸を閉めてから俺に耳打ちしてくる。 「こいつ、お前のガチファンでな。部員に凩雅也の凄さを説いてるんだよ」 「うわ、怖」 「先生、凩と距離近すぎだろ羨まし、いやおれが近づくとか烏滸がましいけど、いやでも羨ましい!」 「な、キモいだろ?」 「いや、俺すごくないんで、人違いすわ……」 先生を盾にするように隠れると、「隠れる凩……」と何故か感動してるので、何をしても喜ばれるのキツすぎだろ、腹減った。 「すんません、俺腹減ったんで……先生、これ貰いますね」 「おー、ゆっくり噛んで食べろよー」 「え、待って待って、凩待って! い、いいい、一緒に食べませんカッ!」 「声裏返ってんぞ」 「一緒に? ……何か嫌かも」 このテンションで絡まれるの正直キツい、と首を横に振れば「2人きりじゃないから!」と慌てて一歩前に出てくる。 「今から部室でミーティングあるからそこでみんなと食うんだよ、だから」 「いや、俺、バレー部じゃないんで部外者だし」 「今から入部してください!」 「ん、そーいや凩、まだバレー部入ってなかったのか」 「転校したてだから色々校内とか覚えたかったし、ジャージないし」 「え、凩、転校生なのか!? え、今噂の転校生って凩!?」 金井さんとやらが驚いたようで「おれの凩があんな問題児なはずが……」とブツブツ言い出したんだけど、ごめん、誰の誰だって? 「いや、それは隣のクラスの方だぞ。凩は全く噂になってない転校生だ」 「どうも、陰の薄い転校生っす」 「おれの中では一番だから!」 それにどう喜べと言うんだ。 「ミーティング、大丈夫なんすか」と言ってやれば、「あ、遅刻する!」と慌てた様子で行こうとして、俺をチラッと見る。 「ジャージなくても先に入部……」 「しつこいと他の部に入りたくなるな、空手部とか」 「格闘技やる凩雅也解釈違い、あ、似合う胴着絶対似合うけどバレー以外の凩雅也解釈違いです! 黙ります黙ります、ジャージ手に入れたら入部してください!」 それじゃ、と早口で騒ぎ立てて走り去る金井さんに「金井ー、廊下は走るなー」と緩く注意してから「ジャージなかったのか、そりゃ学園の責務だなあ」とまた学園に罪を擦り付けてるので「そっすね」と適当に頷いてから別れ、教室に戻った。 焼き肉弁当はめちゃくちゃ美味かった。
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