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授業が滞りなく終わり、放課後。
俺は教材が詰まった段ボールを抱え、部活が休みだと言う三浦に案内され学生寮に着いた。
「悪いな、三浦。案内してくれて」
「いいって。すみませーん、管理人さーん」
玄関ホールの受付に声を掛ける三浦の隣でキョロキョロする、ホテルみたいでこんなところにまで金が掛かってる入学金マジでヤバいだろと不安になってると「はいはい」と優しそうな初老のおじいさんが出てきた。
「お帰りなさい、三浦くん。と、おや君は……ああ、転校生の1人かな」
「あ、凩雅也っす」
「凩くんだね、うん。部屋は4階の430号室だよ。これはね、カードキー」
「カードキーなんだ、ホテルみたい。オートロックみたいな?」
「うん、オートロックだから、カードキー無くさないようにね。再発行までに時間が掛かるんだよ」
「おけっす」
とりあえず段ボールの下ろしポケットに突っ込めば、何やら冊子を渡される。
寮の利用の仕方が書いてあるみたいだ、「読んどきます」と頷き段ボールの上に乗せて持ち上げ直した。
「荷物はもう部屋に運ばれてるから安心していいよ」
「了解っす」
「ふふ、じゃあ何か困ったら来てね。朝の8時から夜の6時まではおじさん居るから」
「はい」
じゃあ、とおじさんと別れ、歩き出す三浦のあとを追う。
「エレベーターと階段あるんだけど、どうする?」
「エレベーターあるのヤバいな。何階まであんのここ」
「2階から部屋があって8階まで」
「わお。4階だし、とりあえず階段で登ってみるかな」
「おっけー。段ボール大丈夫か?」
「大丈夫、これでも運動部よ」
「お、そうだったな。バスケ部いつ見学来る?」
「圧が強いな」
4階まで登り、430、430とドアの横にある数字を数えながら歩けば、ようやく部屋にたどり着いた。
「おー、着いた。案内サンキューな、三浦」
「荷解き手伝おうか?」
「手伝うほどないっすよ」
「そっか。あ、夕飯になったら迎えに来てやろうか? 食堂まで案内するよ」
「何から何まで悪いな、あ、連絡先交換しといて良い?」
「もちろん」
連絡先を交換し、じゃああとで来るなーと去ってく三浦を見送ってからドアを振り返る。
2人一部屋らしいし、同室者が居るんだろうかと段ボールを下ろし、ドアの横のナンバープレートの下にチャイムがあることに気付き、チャイムまであるのかと設備にビビりながら押す。
ピンポーン、と一般的なチャイム音に安堵するが、少し待つが出てくる気配がない。
留守か、放課後すぐだしとポケットから貰ったカードキーを取り出したところでガチャ、と内側から音が聞こえ、目の前のドアが開いた。
「はい?」
「あ、どうも……」
「……誰だ?」
「うわ、イケメン!」
ドアの向こうから顔を覗かせたのは、長身でイケメンの茶髪のお兄さんだ。
イケメン多いな、この学校。
それにこのお兄さん、才賀先輩と同等レベルの誰もがイケメンと言うレベルのイケメンだった。
俺のイケメン発言に目を瞬かせ、そしてニヤッと笑ってから「そうだろ?」と自信ありげに笑ってドアを開けた。
スタイルも良く、無駄な脂肪とか無さそうな鍛えてますみたいな長身のイケメンは俺を見下ろすと「ああ」と頷き後ろを顎で差した。
「段ボール、さっき入れられてたっけな。あんたが同室になる……転校生くんか」
「どうもです」
「あい、どうも。まあ、入れよ」
そう言って中に入ってくイケメンに段ボールを持ち上げて玄関に入り、下ろしてからドアを閉める。
ガチャリと施錠音を聞いてから靴を脱いで置いてある靴の横に並べてから段ボールを持ち上げれば、両サイドにドアが1つずつ、そして奥にあるドアが開け放たれてるのでそっちに向かえば、広めの空間が。
左側に2段ベッド、正面奥に窓と勉強机が2つ並んでおり、右側にはテレビが壁に掛けられてその前にはローテーブルが置いてあった。
「おお……」
「とりあえず空いてるとこ適当に使っていいぜ。ベッドは下になるが、上のが良いか?」
「あ、いや下でいっすよ。結構大きいんすね、この2段ベッド」
どうやらカーテンがついてるのでプライバシー的なものが守られるらしい、高そう。
勉強机の片方の椅子の横に段ボールが積まれてるので、持ってる段ボールを置いた。どうやらこっちを使っていいらしい。
「ここがクローゼットな。こっちは俺が使ってる」
「おけっす」
「で、冷蔵庫と簡易キッチンが備わってるから料理したくなったらしていいやつだ。食料は下のコンビニに売ってる」
「コンビニあるんだ、すげーっすね」
「だな。んで、向こうにドア2つあったろ? トイレとシャワールームが付いてるから好きに使えよ」
「個室にシャワールームとトイレが別々!? 賃貸だと高そうな物件だ」
「はは、そーだな。コンビニの話をしたが、1階には食堂、コインランドリー、大浴場などなど、色々あるから。洗濯はコインランドリーだな」
分かりやすく色々教えて貰ってとても助かるが、肝心なことを聞き忘れた。
「そんな感じだな」と簡単に説明してくれたお兄さんに「あの」と頭を下げる。
「ん?」
「こ、凩雅也って言います、よろしくお願いします」
「ああ、そーいや名乗ってなかったな、互いに。悪かった、俺は3年の小林陣、好きに呼んでいいぜ。俺は雅也って呼ぶかな」
「あ、じゃあ俺も陣先輩って呼んでいっすか?」
「おーいいぜ。同室同士、仲良くすっか」
初対面で名前呼びだが、親しげな陣先輩に同室者が優しそうで良かったと安堵してると、陣先輩は「俺はとりあえず戻るわ」と出ていこうとする。
「え?」
「転校生の同室者が出来るから、部屋で待ってたんだよ。実は委員会があってね、戻らなきゃなんねえんだわ、悪いな」
「え、俺の為にわざわざ寮で待っててくれたんすか?」
「気にすんなよ、ずっと同室者居なくてちょっと寂しかったから同室者出来て喜んでんだぜ、俺。じゃ、荷解き頑張れよー」
そう言って陣先輩はさっさと部屋を出てく、忙しいのに何か申し訳ないな。
1人になったので段ボールを開け、教材を机に、郵送した服とかを空いてるクローゼットに押し込んだら、思いの外早く終わってしまい、制服だったのを思い出して私服に着替えることにした。
制服をハンガーに掛けてから勉強机の上に置いた寮の利用の仕方の冊子をパラパラと捲る。
寮内は私服でオッケー、あとは陣先輩が簡単に説明してくれたことなどが書いてあり、ふんふんと頷いてから閉じて伸びをする。
「あー、疲れた……」
牢獄だと思ってたが思いの外優しい生徒が多いし、ローカルルール的なものがあるようだが、そこまで地獄に思わなくて済んでる。
じいちゃんにメッセージで「何とかやってけそう」と送ってから、眠くなってしまい2段ベッドの下に近寄り身を投げ出した。
ふかふかの感触に、放置されてた分がハードだったので疲労感を覚えてたようで、気付けば意識を手放した。
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