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天使再臨
大学の講義を終え、行きつけのカフェへやって来た。真っ昼間だからか、店内は混んでいる。
順番待ちの台帳に名前を記入し、肩に乗った紅葉の葉を払いながら店内を見渡した。すると、テーブル席から、こちらに手を振っている女性が目に入った。一体誰だ?
「長岡くーん! 久し振りー! おいでおいで!」
周りの喧騒を浄化するような天使の囀り。
春香だった。
――
「久し振りだね。高校を卒業して以来だから、二年と……えーと、何日かな?」
「普通に二年半でいいんじゃない?」
あの日以来、二人の間で恋が始ま……らなかった。たまに会話は交わすが、それだけ。進級後にクラスが別れて以降は、顔を合わすことも稀になった。そして、そのまま卒業……。
だが、心はずっと、春香色に染まっていた。奇跡のような再会に、心臓がヒンズースクワットを始めている。
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