【5・結城幽幻】

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【5・結城幽幻】

「おはよう!お祖父ちゃん!」 ワシ…結城幽幻が、早朝の一仕事を終えて家の縁側で庭を眺めていると… 不意に、背後から声をかけられた。 振り向くと… 同居している孫の勇気がニコニコしながら、立っている。 「お!勇気!おはよう」 ワシも笑顔で挨拶を返した。 「お祖父ちゃん!今日も良い天気だねぇ!」 「そうじゃのぉ。ホンに良い天気じゃて」 ワシは雲一つ無い、春の青空を見上げながら目を細めた。 「あれ?勇気よ。そういや、今日は大学は休みか?」 「アハハ。嫌だなぁ。お祖父ちゃん。今、大学は春休み中だよ!」 「あぁっ!そうじゃったか!これは、済まぬ済まぬ!ガハハッ!!」 ワシは、思わずいつものクセで『つるりっ!』と自分のスキンヘッドを撫で上げながら孫に頭を下げた。 「もう!お祖父ちゃんってば!今時『ガハハッ』って笑う人なんて、いないよ」 勇気はワシの言葉に対し、さも可笑しそうにコロコロと笑う。 「あ、お母さんがもうちょっとで朝ご飯だって言ってたよ!」 「おお!了解じゃ! さぁて!腕が鳴る…じゃなくて、腹が鳴るわい。ガハハッ!!」 孫の結城勇気は現在、大学生。 祖父のワシが言うのも何じゃが、なかなかに聡明で利発な好男子じゃ。 ワシにとって、どこへ出しても恥ずかしくない自慢の孫なんじゃよ! 勿論!目に入れても痛くないくらい本当に可愛い! しかも、なかなかのイケメンと来とる! 誰に似たのかのぉ…。 もしかして、ワシか? なんちゃってな! ガハハッ!!
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