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と…。
『ブゥーッ!ブゥーッ!』
不意に、どこからともなくバイブ音が鳴り響いた。
「あ、お祖父ちゃん!ごめん!電話だ!こんな早い時間に一体、誰だろう」
勇気がジーパンのポケットからスマホを取り出すと、自分の耳にあてがった。
「はい。結城ですが」
と、その数秒後…。
「わぁ!橋口さんじゃないか!久しぶり!」
孫の顔がパッと華やいだ。
「うんうん!僕は元気だよ!橋口さんは元気?いやぁ、本当に久しぶり」
嬉しそうに話す孫の勇気。
と…。
うん?
橋口さん…じゃと?
ワシは…その名前に、どこか聞き覚えが有った。
確か、勇気の高校時代のクラスメイトで…何度か、この寺にも遊びに来た事が有る…あの橋口さん…か?
ハキハキと明るくて気持ちの良い挨拶をする…勇気と同様に利発で聡明そうな素敵なお嬢さんじゃったなぁ。
確か…フルネームは、橋口美穂さんと言ったかのぉ。
と、不意に、…
電話で話す勇気の両の頬が…
ほんのり赤らむのを…
ワシは、見逃さなかった。
うむっ!
まさに、青春じゃないかっ!!
ワシは…またもや、いつものクセで『つるりっ!』と自分のスキンヘッドを撫で上げながら…思わずニヤニヤしてしまった。
ちなみに、このスキンヘッドは…
ワシ、この結城幽幻和尚のトレードマークなんじゃ!
と…。
「…え?突然、どうしたんだい?橋口さん。相談したい事って何?」
急に…孫が怪訝そうな表情になって電話に向かって質問を始めた。
はて…。
あの快活そうな橋口さんが…勇気に相談したい事って…
一体、何じゃろうか……。
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