【5・結城幽幻】

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と…。 『ブゥーッ!ブゥーッ!』 不意に、どこからともなくバイブ音が鳴り響いた。 「あ、お祖父ちゃん!ごめん!電話だ!こんな早い時間に一体、誰だろう」 勇気がジーパンのポケットからスマホを取り出すと、自分の耳にあてがった。 「はい。結城ですが」 と、その数秒後…。 「わぁ!橋口さんじゃないか!久しぶり!」 孫の顔がパッと華やいだ。 「うんうん!僕は元気だよ!橋口さんは元気?いやぁ、本当に久しぶり」 嬉しそうに話す孫の勇気。 と…。 うん? 橋口さん…じゃと? ワシは…その名前に、どこか聞き覚えが有った。 確か、勇気の高校時代のクラスメイトで…何度か、この寺にも遊びに来た事が有る…あの橋口さん…か? ハキハキと明るくて気持ちの良い挨拶をする…勇気と同様に利発で聡明そうな素敵なお嬢さんじゃったなぁ。 確か…フルネームは、橋口美穂さんと言ったかのぉ。 と、不意に、… 電話で話す勇気の両の頬が… ほんのり赤らむのを… ワシは、見逃さなかった。 うむっ! まさに、青春じゃないかっ!! ワシは…またもや、いつものクセで『つるりっ!』と自分のスキンヘッドを撫で上げながら…思わずニヤニヤしてしまった。 ちなみに、このスキンヘッドは… ワシ、この結城幽幻和尚のトレードマークなんじゃ! と…。 「…え?突然、どうしたんだい?橋口さん。相談したい事って何?」 急に…孫が怪訝そうな表情になって電話に向かって質問を始めた。 はて…。 あの快活そうな橋口さんが…勇気に相談したい事って… 一体、何じゃろうか……。
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