【6・結城勇気】

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【6・結城勇気】

僕の名前は、結城勇気。 現在、大学生だ。 OLで独り暮らしをしている高校時代のクラスメイト、橋口美穂さんから… 「結城君…確か今、大学は春休み中だよね? ちょっと折り入って相談したい事が有るから今度の日曜にでも私のアパートに来てくれないかなぁ。ね!お願い!」 と、久しぶりにスマホに連絡をもらったのは、今から三日前の事だ。 確かに、彼女が言う通り、今は春休み中で大学は休み。 あ、言っとくけど僕と橋口さんは別に昔、付き合ってたって訳じゃないよ! まあ、高校時代によく遊んだ仲って事かな…。 「…え?突然、どうしたんだい?橋口さん。相談したい事って何?」 と、私は電話口で彼女に聞いてみたが… 「ううん…電話じゃ、ちょっと話しずらいし…まずは私のアパートの部屋に来てみて欲しいのよ。 このままだと、私…モヤモヤして、頭が変になりそうなのよぉ」 との答えが返って来た。 「え?モヤモヤ?一体…何が有ったんだ?」 と、内心でそう思いながら僕は約束した日曜の日中に彼女のアパートに行ってみた。 「わぁ!よく来てくれたわね!さ、上がって上がって!」 久しぶりに会った橋口さんは、持ち前の快活な明るい声で僕を出迎えてくれた。 でも… 気のせいか、どことなく顔色が悪いような気もする…。 一体、彼女の身の上に何が有ったんだろうか…。 僕は、彼女に言われるがままにアパートの部屋に通された。 よく考えたら、橋口さんのアパートに来るのは数年前の引っ越しの手伝いの時、以来だ。 「へぇ。なかなか綺麗にしてるじゃん」 僕は、部屋のソファに座って、改めて辺りを見渡してみた。 橋口さんは高校時代、実家にいた頃から掃除や整理整頓が大の苦手で僕が遊びに行くと、日常的に部屋が散らかりまくっていた。 読書家なのは良い事だと思うんだけど…読み終わった漫画や小説は、あちこちに放りっぱなしだったり、それらの表紙カバーやしおりなんかも、気付くとあちこちバラバラになって机や本棚の裏っ側に落ちていたりすると本人から聞いた事が有る。 「まあ、表紙カバーが無いからといって別に本の内容が変わる訳じゃないしね。しおりだって無けりゃ無いで代用品なんか、探せば有るものよ」 と、よく彼女はそう言いながら笑っていたものだ。
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