【6・結城勇気】

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「分かったよ…。 ちょっと集中して部屋を視てみるね」 僕は、改めて部屋の中をぐるりと見回してみた。 すると…。 あっ!感じる! 確かに! この部屋には… 『ナニカ』が、いるみたいだ! 僕は、更に神経を集中させた! ああっ! この部屋の奥の… 隅っこの角! あそこに、いる! 僕は、その場所を指差して橋口さんに聞いてみた。 「橋口さん!もしかして、夢の中でお婆さんが立っていた場所って、あそこかい?いつも同じ場所?」 すると、彼女は 「ええ!そうよ! 決まって、いつもあそこ!やっぱり『ナニカ』いるのね!」 と、僕の問いに少し興奮ぎみに声をあげた。 「うん…。 でも、この霊…別に橋口さんに何か危害を加えようとしている訳ではないように感じるなぁ…。 ちょっと怒っているのは、確かだけど」 僕は、霊の姿がはっきりとは見えないけど、その感情はうっすら読み取る事ができるんだ。 「え?ちょっと怒ってる?そ、そう言われても…私、全く心当たり無いんだけど」 橋口さんは、カナリの困り顔で首をかしげた。 僕は、改めてその隅っこの場所をよく見てみた。 と…その隅っこの床の上に一個の大きなダンボール箱が置いてある。 「あれ?橋口さん。あのダンボール箱の中身は、何?」 「え?あの箱の中身?」 彼女が怪訝そうな表情で口を開いた。 「実は私、〇〇ビールのプレゼント・キャンペーンに応募して当選したのよ。あの箱の中身は、その当選品の缶ビールよ。 だけど、めちゃめちゃ重いからあそこに置きっぱなしのままにしてあるんだけど。箱の封を開けて中から何本か取り出しては、冷蔵庫で冷やして飲んでるわ」 「なるほど…」 僕は、更に橋口さんに質問してみた。 「確か…橋口さんの夢の中に出て来るお婆さん… 君に向かって『コレハ…私ノ…物ダ…』って言って来るんだったよね?」 「ええ…そうよ…」 うん! 間違いない! 僕は、確信した! 「橋口さん! そのお婆さん…『このダンボール箱の中のビールは、私の物だ!それを何で、お前が勝手に飲むんだ!』って怒ってるんだと思うよ!」
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