【1・鬼林健太】

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【1・鬼林健太】

俺の名前は、鬼林健太。 現在、フリーターだ。 俺は平日に就活しながら土日はコンビニ店員のバイトで生計を立てている。 実は、数ヵ月前に今まで働いていた会社が潰れちまって…。 それで…最近、派遣会社にも登録してみたんだけど…そこでちょっと変わった『現場仕事』を紹介されたんだ。 その現場仕事というのは、いわゆる『掃除屋』。 と、言っても別にパチンコ店とか病院やオフィスなんかの清掃員じゃなくて… 俺が紹介された掃除屋の仕事は…例えば、誰も住んでいない廃屋とかアパートの空き部屋なんかの掃除を専門に請け負ってるんだ。 まあ、普通に考えたら廃屋や空き部屋の掃除なんかしなくて良いのでは? と、思うかもしれないけど…俺達の仕事は、そこに放置されてしまった誰も使わない家財道具を選別して、使えそうな物はアウトレット店に売ったり、使えそうもない物は廃品業者に持ち込んで引き取ってもらったりしている。 つまり、この仕事の『現場』というのは住人が家財道具一切を置き去りにして、急にいなくなってしまった廃屋や空き部屋という訳。 家財道具一切を置き去りにして、いなくなってしまう住人というのは… つまりは、夜逃げしたり行方不明になったりした人達の事だ。 それと、他には… 急病で亡くなってしまった人や…自殺したり殺されてしまった場合も勿論、それに当てはまる。 清掃と言うより、場合によっては『遺品処分』と言った方がピンと来るかもしれないな。 実は、俺も最初のうちは自殺者が住んでいたという部屋の現場へ行った時なんかは、あまりの気持ち悪さに、かなりビビりながらやったものだが…何度かこの仕事をしてるうちにすっかり慣れっこになってしまった。 実際にやってみると結構な力仕事だけど、亡くなったり失踪したりした人が住んでいた部屋や家の掃除という仕事の内容から、あまりやりたがる人が少ないせいも有るのか、給料も結構な額をもらえる。 現場はいつもいつも有る訳じゃなくて完全に不定期仕事…それでも月に二、三回のペースで仕事の依頼が来る。 と、いう訳で現在、俺は平日の就活の合間にその掃除屋の仕事をやりつつ、土日はコンビニでバイトの日々を送っているんだ。
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