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「は…い?」
橋口さんは、僕が出した結論にキョトンとした表情になってしまった。
「だって、結城君?
あのビールは、私が自分自身で懸賞に応募して当選してゲットした物なのよ?間違いなく私の物なのよ?お婆さんの物じゃないわ」
と、彼女は「実は、あまりにも当選した事が嬉しくて、箱から剥がして記念にとっておいたんだけど…」と、戸棚の引き出しから運送会社がビールのダンボール箱に貼り付けていたという送り状を取り出すと僕に見せてくれた。
見ると…確かに、その送り状に記されている送り主の名前は『〇〇ビール株式会社』…。
そして、送り先の欄には…橋口さんのフルネームと彼女の住所、アパートの部屋番号までがしっかり記載されていた。
「ね?このビールは、間違いなく私が当選してゲットした物なのよ?
だからそれを飲んだからと言って、何で会った事も無いお婆さんに怒られなくちゃいけないのよ…」
「うぅん…。それは、僕にもよく分からないけど…。
でも、少なくともお婆さんは、あのビールを自分の物だ!と思っているのは確かだよ!」
と…
「あ!」
急に橋口さんが驚きの声をあげた!
「そう言えば…
私があの不気味な夢を初めて見た晩って…私が初めてあの箱のビールを飲んだのと同じ日だわ!
私…あのビールを飲んだ晩から、あの夢を見るようになったのよ!」
「そうか!
…って事は、だよ!」
僕は、更に確信を深めながら彼女に言った。
「やっぱり、お婆さんはあの箱の中のビールを飲みたがってるんだよ!何でかは、知らないけど…。
だから、あのビールの味覚をお婆さんに味わってもらえば、満足して君の夢にも出て来なくなるんじゃないかな」
「えっ?えっ?」
と、そこで橋口さんが更に困った表情を見せた。
「でも、結城君?
どうやったらお婆さんにビールの味覚を味わってもらえるって言うの?方法が分からないわ」
「あ、それに関しては僕にちょっと考えが有るんだ!聞いてもらえるかな?」
と、僕は彼女に『ある方法』を教えた。
「うぅん、なるほどぉ…。うん!やってみるわ!このモヤモヤを解消できるなら、やってみる価値は有りそうね。結城君!ありがとう!」
と、彼女はちょっと半信半疑といった表情をしながらも、それでも大きく頷いたのだった。
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