【7・橋口美穂】

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【7・橋口美穂】

私、橋口美穂は…結城君が帰ったその日の晩から早速、彼から教えられた『方法』を実践してみた。 その方法とは… 「良いかい?橋口さん。 これから、君があのダンボール箱の中のビールを飲む時は、必ず飲む前にどんなお皿でも良いから小皿にお線香を三本あげて、お婆さんの霊が立っている方向…部屋の角に向かって手を合わせながら『このビールを貴女にお供えします。どうか安らかに成仏して下さい』と、お祈りした後に飲むようにするんだ! つまり、ビールをただ飲むんじゃなくて、お婆さんへの『お供え物として』お祈りしてから『有り難く、頂く』んだよ! そうすれば、橋口さんが飲んだビールの味覚と同じ味覚をお婆さんも味わう事ができるはずだ!」 私は正直、半信半疑ながらも結城君から教えられた通りにお線香をあげてから、部屋の角に向かってお祈りしてビールを飲むようにした。 そしたらさ! 何と!本当にあの不気味な夢を見る事が無くなったのよ! まあ、結城君に教えられた方法をやり始めて、最初のうちはやっぱり夢の中にあのお婆さんが出て来てたんだけど… 前みたいな恨めしそうな表情じゃなくて、段々と穏やかな表情になって行ったの! 『コレハ…私ノ…物ダ…』なんて恨み言も言わなくなって、その代わり『今夜ノハ…チョット、ヌルカッタ…』とか、言い始めたのよね。 そして、遂に箱の中のビールの最後の一本を飲んだ晩には… 『アリガトウ…美味シカッタ…』と言って、すぅっと消えちゃったのよ! で…それ以来、本当に私があの夢を見る事は無くなったのよ! いやぁ、さすが結城君だなぁ! 大きなお寺さんの御曹司だけの事は、あるわよねっ! これで、引っ越ししなくて済むし、安心してまた懸賞応募生活を続けて行ける! 今まで感じていたモヤモヤも、すっかり解消! と… 言いたいところなんだけど…。 でも、やっぱり… 今でも、私の中には『ある疑問』が…別のモヤモヤが残ってるのよねぇ…。 だって、あの箱の中のビールは、間違いなく私が懸賞に当選してゲットした物なのよ? それを何で、あのお婆さん…『このビールは、自分の物だ!』と、私に向かって怒って来たりしたのかしら…。
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