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…え?
そ、それって…
一体…どういう事なんだろうか…。
僕は、混乱した。
「って、事は…橋口さん?つまり君は元々、ビールのキャンペーンに応募なんかしていないのに…それなのに、なぜか当選品のあのダンボール箱が君の部屋に届いたって事?しかも、誤配達なんかじゃなしに」
僕は、以前に橋口さんから見せてもらった運送会社の送り状の中身を思い出しながら口を開いた。
「ええ、そういう事になるわよねぇ」
橋口さんがそれに応える。
あの送り状の送り先の欄には、確かに橋口さんのフルネームと住所が…アパートの部屋番号まで、きちんと記されていた…。
従って…彼女の部屋に届いたダンボール箱は、決して誤って配達された物という訳ではない…。
そして、更にあの送り状の送り主の欄には『〇〇ビール株式会社』と、会社名が記されていた。
つまり、送り主が個人名ではなくビール会社という事は…
やはり、橋口さんの部屋に届いたダンボール箱はキャンペーンの当選品と考えて、ほぼ間違いないだろう…。
しかし…
実際には…彼女は、そのキャンペーンには応募していないのだ…。
「全く!変な話よねぇ。
また別のモヤモヤが湧いて来ちゃったわよ!アハハ」
彼女がまたもや快活に笑いながら言った。
「実は…私もちょっと気になってさ!あちこち電話して確認してみたのよぉ」
何でも、橋口さんは実家の家族や親戚は元より…今、働いている会社や学生時代の友人、知人…果ては、別れたモトカレにまで片っ端から電話をかけまくって、
〇〇ビールのご愛飲キャンペーンに彼女の名前で応募したのかどうかを確認したんだそうだ。
で…その結果、その中の誰一人としてそのキャンペーンに応募した人物は、いなかったとの事だった…。
と、いう事は…
橋口さんに全く心当たりの無い、誰か別の第三者が…
彼女の代わりに…言い換えるなら、彼女になりすまして、ビールのご愛飲キャンペーンに応募していたって事になる…。
そして、それがたまたま当選した…。
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