【終・綾波静子】

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さて、それから数日後。 早速、私は自分の荷物と共にそのD棟に引っ越した。 建物は、木造二階建てで… 周囲の環境は、木村氏が説明していた通り、自然に囲まれた本当に素晴らしいロケーションだ! 私は、その日のうちに荷ほどきを済ませ… 夜にベッドで眠りについた。 と… 『ごめんなさいねぇ』 何者かの声が… 聞こえて来る夢を見たのだ。 中年の女性の声かしら? 次の日の朝…起きてみると夢の内容はよく覚えていないのだが、『ごめんなさいねぇ』という言葉だけは、妙に頭に残った。 さて。 こうして、私はD棟での生活を本格的に始めた。 私の毎日の日課は… まず、午前中はいろいろと家事をした後に、午後からは家の周りの自然を満喫しながらの散策…。 そして、帰宅後はD棟で大好きなビールを飲みながら、趣味の詩を書くというものだ。 それで… 更に数日が過ぎたのだが… 私が霊の姿を見る事は、やっぱり無かった。 それより…ここの周りの環境は、自然に囲まれていて本当に素晴らしい! 私は毎日の散策を続けるうち、私なりの『お気に入りの散策コース』を見付けていた。 「ああ…。騒音でモヤモヤした気持ちとは、無縁の生活…本当に素敵だわぁ!」 そして、更にある晩の事。 夜に私が眠りについていると…また、妙な夢を見た。 『ごめんよぉ』 今度は、男の子の声。 またもや…次の朝、起きてみると夢の内容は覚えていないのだが、声だけは頭に残っている。 「もしかして…」 と、私は考えた。 「夢の中で、私が聞いたこれらの『謝罪の言葉』は…このD棟を霊道として通っている霊たちが、私に謝って来ているのではないだろうか…」 いつもの通り道とは言え、他人である私の家に通る度に無断で上がり込むのだ。 多少の申し訳なさは、感じているのではないだろうか。 「いやぁ…。 何とも、リチギな霊たちじゃないの!アハハ」 そして、それからというもの… 私は、『彼ら』からの様々な謝罪の言葉を時々、夢の中で聞くようになった。 『ごめんなさいねぇ』 『ごめんよぉ』 『申し訳ないっ』 『済まんなぁ』 『すいませんです』
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