【終・綾波静子】

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私は…痩せ細りながらも、今もこうして生き続けている…。 もしかしたら… あの霊たちは、私を完全に殺すツモリは無いのかもしれない…。 私の『魂』を吸い取り続けてはいるが… 私が生きて行けるくらいには…ソレを残しておいてくれているような気がする。 今の私は… 彼らの『貴重な栄養源みたいなモノ』なのかもしれない…。 だから… 私は、彼らにとって…死なれては困る存在…。 ところで、最近… どうも家の掃除とか家事が面倒になって来た…。 ふと、周りを見渡すと家中に缶ビールの空き缶や様々なゴミが散乱している。 この家…いつの間にか近所から、『ゴミ屋敷』と呼ばれているらしい…。 まあ、良いわ。 そう呼びたい人は、呼べば良い。 何しろ、今の私はモヤモヤの無い…この暮らしに本当に満足しているのだ。 そして、ふと私は… 最近、手に入れた… ある一枚の葉書に目をやる。 この葉書は、私が大好きでいつも飲んでいる〇〇ビールの『ナチュラル・ライトご愛飲キャンペーン』の応募葉書…。 私の最近の楽しみは、この葉書にビールの銘柄シールを貼って行く事だ。 そして、遂に今日! そのシールを全部、貼る事ができた! よし! これで、キャンペーンに応募できるわ! とっ! 『ズキン!』 不意に、私の胸に… 鈍い痛みが走ったのだ! 「え?」 どうやら、心臓の持病が悪化したらしい…。 私の意識が… 急速に… 遠のいて行く…。 「ちょ、ちょっと…待ってよ…。私…まだ、このキャンペーンに…応募していないのよ…。 せっかく…シールが…全部、貯まったというのに…。楽しみに…していたのに…」 今まで、私は… あの霊たちに、生かされ続けて来た…。 でも、もしかしたら… もう、今の私の体には… 彼らが満足するだけの『栄養分』が、残量的に足りなくなってしまったのかもしれない…。 私は… 『用済み』という訳か…。 そして、次の瞬間…。 私の意識は… 『ぷつん』と、 途切れて しまったのだった……。 エッ?? モシカシテ、私… 死ンデシマッタ? アァッ! 私ノ体… 宙ニ… 浮イテルワッ!! ウゥン…。 ソレニシテモ… ビール… 飲ミタイ……………。
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