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わたしは堤防によじ登ろうとしたけれど上手くよじ登れない。
「ははっ、俺の手につかまってください」と吉田さんは笑いながら手を差し伸べた。
この手につかまって良いのかなと一瞬考えたけれど自力で堤防に登ることは無理だと諦め差し伸べられたその手につかまった。
吉田さんの手は温かくてぽかぽかしていてなんだか優しさがふわりと伝わってきた。わたしは助けを借りなんとか堤防に登ることに成功し吉田さんの隣に腰を下ろした。
ゴーヤの入っているスーパーの袋もドーンと置いた。「すみません、ありがとうございます」
「いえいえ。それはそうと、俺の背後にずっと怪しげな気配を感じていたんですよ。その正体は梅木さんだったんですね」
吉田さんはそう言ってにやりと笑った。
「えっ、怪しげな気配って……気がついていたんですか?」
「いえ、何となく誰かが俺の後ろを歩いてるなとは思っていてちょっと怪しげな気配だなと感じていましたがでも気のせいかなとも思っていましたよ」
吉田さんは眉根を寄せそれから可笑しそうにクスクスと笑った。
「ごめんなさい。何となく声を掛けることが出来なくて……」
わたしは、手を合わせて謝った。
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