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#1
桜ヶ丘高校。
そこの二年生となる今日という日。
窓から見える桜は、半分以上散っている。
始業式が始まる前の教室で、七桜詩織は、自分の机を見てため息をついた。
机の上には一枚の紙。
『組長』『薬中』『人殺し』──。
心ない言葉がこれでもかと連なっている。
──私は、『七桜組』はそんなんじゃないもん。
心の中で一人呟く。
察した方もいるかもしれないが、私の家はヤクザである。名は『七桜組』。詩織はそこの一人娘にあたる。
──今、私のこと、『やべえ人』だと思った人。違うからね!
『七桜組』はヤクザといっても、薬も殺しも御法度のクリーンな組だし、街の平和を陰から支える縁の下の力持ちなの!
…でも、そのことを知っている人は意外にも少なかったりする。
だから、こういうイジメもどきは日常茶飯事だ。
慣れてるし、別にいいんだけど、もう高校生なのにまだするか、と思わなくもない。
私自身、イジメに対してこんな感じだし、別に今の家に生まれてきたことに後悔はない。
ただ、私の家庭環境や、遺伝で真っ白な髪と真っ赤な瞳に恐れて、友達がいないのはちょっぴり悲しい。
「もしもーし。お嬢?大丈夫ですかー?」
いつまでも席に座らない私に二代目ボディーガードである同級生の『松浦葵』が声をかけた。
葵は頭がいい。家事もできる。格闘技もできる。の完璧三拍子人間。
私に近づく男にうるさいお父さんも彼のことだけは許している。
というか、友達はいないのに、ボディーガードはいる。どんな皮肉だ?
「平気だけど、お嬢って人前で呼ぶのやめてくれない?これで何回目よ…。」
「あーすみません。つい癖で。」
頭を書く葵も悔しいが様になっている。
葵関連でもイジメ、あるだろうなぁ…。
去年みたいに、『葵くんから離れて!悪魔が!』とか。
…こんな普通とは言い難い私の日常。
だからこそ、普通というものに憧れてみたりする。
しかし、それは叶わないことだと一番私が知っている。
故に私はまたため息をつくのだった。
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