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飯田さんは立ち上がり、その場で自己紹介をする。 彼女は、去年、ずっと委員長をしていた。 きっと今年もなのだろうな。 飯田さんは自己紹介を終え、礼をする。 内容は聞く限り、真面目な感じだった。 まばらな拍手が起きる。 その後も、植木さん…加藤さん…田中さん…と自己紹介は続いていく。 そして、私の番になった。 私はその場に立つ。 今年は嬉しいことに野次は飛んでこなかった。 ただ、男子たちがコソコソと話してるのは聞こえた。 コソコソしてる人たち。顔、覚えたかんな。 私は一丁前に満面の笑みを顔に貼り付ける。 「七桜詩織です。去年一緒だった人は引き続きよろしくお願いします。今年初めて一緒になった人も気軽に話しかけてください。」 …結局、自分のことは一つとして語らず、当たり障りのないことを言った。 心のどこかで、普通のことを言ったらいけないと思ってしまったのかもしれない。 私は席に座る。 遠慮を感じるまばらな拍手は他と比べ物にならないほど、小さく感じた。私がそう感じただけかもしれないが…。 チラリとハゲゴリラの方を見ると眉が真ん中に寄っていたから、拍手は小さかったのだろう。ハゲゴリラは人一倍平等という言葉にうるさい先生だった。 そう思ってる間にも自己紹介は進んでいく。 二木さん……野々村さん…。 そして、さっきまで話していた隣の席の男子の番になった。 「…『花房優斗(はなぶさゆうと)』です。今年から、こちらに編入してきました。趣味は飼ってる金魚の世話。部活は、皆さんのおすすめを聞きたいです。分からないことだらけなので、色々聞きたいと思ってます。 よろしくお願いします。」 ──隣の人改め、花房くんは、真面目な好青年という感じだ。 私のことを『お前』と呼んでくるような人には到底思えない。先ほどまでの光景は夢だったのだろうか。 花房くんのことが気になったが、その後も自己紹介は続いていき、葵の番になる。 私はここである事を思い出す。 「松浦葵です。七桜さんの護衛を任されています。近づく輩は容赦なしです。一年間よろしくお願いします。」 葵はニコニコしながらそう言う。 …しまった。注意しとくの忘れてた。 葵は、完璧人間なのだが、性格が少し天然というか、抜けてるというか、時々こういう事をしでかした。 やはり今年も変わらないスタート。 周りから三メートルくらい距離を置かれてのスタートだ。 私は頭が痛かった。 花房くんの方から、クククッと笑い声が聞こえた気がした。
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