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時刻は21時30分。
変わらず制服の私たちの眼前には昼間とは違い、煌びやかな空間が広がっている。
親は一言も言わなかったけど…。
こういう所に高校生二人で行けって無茶な話じゃない?
私が考えるに、経験積ませたいんだろうけど、一応この年で警察に補導されるとかできれば避けたいからね?
…え?ヤクザは塀の中に入って初めて一人前?
それとこれとは話が別っていうか…。
というか、七桜組的にはそれアウトでしょうよ。
言っとくけど、今言ってることは別に緊張からの言い訳とかじゃないからね?
「大丈夫ですか?お嬢。」
「へ、平気。」
……嘘です。相当緊張しています。こういう接待とかって何すればいいとか、マナーとかよくわかんないし、失敗したらどうしよう…。
「にしても、私たち思い切り場違いじゃない?」
私は緊張からできるだけ逃げるために隣にいる葵に声を掛ける。声は少し震えた。
「どこにいてもお嬢は可愛いですよ。」
そんな私の気持ちに気づいたのか、葵が軽口を叩く。
「もう、冗談きついよ。」
「…バレましたか?」
そんな会話をして、私は笑う。葵も静かに微笑んでいた。緊張は少しおさまった。
……そのとき、背後でクククッと笑い声がする。
「ここは高校生が来るような所じゃねぇよ?七桜とその護衛さん?」
まるで、音も立てずに近づく蜘蛛のように私たちのすぐ背後に立つ人影があった。
振り返らなくてもそこにいるのは誰かわかる。
「…君こそ、高校生じゃんか。花房くん。」
私は、真っ先に思ったことを口に出し、ゆっくり後ろを向く。
そこに立つのは、それもそうか、と笑う花房くん。バーテンダー風の格好をしている。
なぜ彼はここにいるのだろうか?
「情報屋『perfect crime』として、君らの親父さんを待ってたんだけど…。あ、別に事情はなんとなく察してるから理由はいいよ。今日は挨拶に来たんだろ?案内してやるからついてこいよ。」
あまりにも情報量が多い花房くんの言葉。
疑問は色々あったが、一番は…。
「…花房くんって何者なの?」
すると、花房くんはクククッと笑い、
「さて、何者でしょうか?」
と意地悪に言う。そして、
「…そういう散策はこの業界では嫌われるから、気をつけろよ?次期組長さん?」
そこまで言うやいなや、私たちに背中を見せ、手をひらひらさせながら歩き始めた。
ついてこいよという意なのだろうか。
私と葵はしっくりしないため顔を見合わせたが、とりあえず、彼についていくことにした。
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