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松浦葵と七桜詩織が帰った後の『perfect crime』の拠点。
俺、花房優斗は椅子に座るリーダー、『神楽椿』の横でため息をついた。
先ほどまで客が座っていたソファにどかどか座る一つ年下の双子である『六園雷』と『六園風』。
普段ため息をつくのはこの二人によるものが多いが、今日は少し別だった。
「で、優斗はどうにかできそうなの?詩織ちゃんのこと。」
「…もちろんですよ。」
椿から課された命令。これがなかなか厄介だった。
俺は、命令された日に椿に言われた言葉を思い出す。
『七桜組はこの街一の勢力。風と雷がトップに立つ暴走族『Winder』の勢力をもってしても、歯が立たない。
絶対何か秘密があるはず…。
七桜組を潰したいと思っている人物も山ほどいる。
その秘密を手に入れ、リークしたとしたら、俺らがこの街のトップになることも容易い。
というわけでだ。優斗。
娘の詩織ちゃんから上手いこと責めていこうと思う。
お前には、彼女と同じ高校に通ってもらう。』
そして──。
「上手いこと、彼女のことをオトす。できるよな?」
現実に引き戻す椿の言葉。
椿は、イエスがノーで答える質問をよくする。
しかし、答えは一択だったりする。
「もちろん、やってみせますよ。」
七桜詩織。正直アイツのことはどうでもいい。
俺にも野望だとかそういうものがある。
俺の野望…。それは、両親を見返すことだ。
…ガキくさい?抜かしてろ。
そんなチンケな話じゃねぇ。
悪く思うなよ。七桜詩織。せいぜい足掻いて見せろ。
俺はこの中で一番の新人。故にこんな責任重大な任務は初めてだった。だから思わず、感嘆のため息をついてしまうのだった──。
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