心が叫ぶ

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 病院まではセンターの車で向かった。ハンドルは牧野が握った。  怜が運び込まれたのは、局やセンターと同じ区内にある有名な医科大学病院だった。  総合受付で牧野は生島怜の関係で児童相談センターの代表として来たと告げた。内線で呼び出されたのは中年の女性看護師だった。彼女に案内されるまま、牧野と一司の二人は小児集中治療室のフロアまで向かった。  ガラス越しに医療器具や複雑なモニターが見える。しかし、怜の姿はなかった。看護師の話によると、奥の部屋で治療を受けているとの事で、この先は両親しか立ち入り出来ないと頭を下げられた。 「怜くんの、お母さんは来られていますか?」  牧野の問いに看護師は頷くと急ぎならお呼びしましょうかと尋ねた。 「いいえ、待ちます……それより、怜くんは今、どのような状態でしょうか?」  それを断って牧野は怜の容態を尋ねた。胸の前で重ねる彼女の手は震えていた。一司もそうだ。さっきからずっと心臓が落ち着かない。どうか大丈夫と言って欲しい。二人は固唾を呑んで看護師の説明を待った。 「正直、厳しいです。このまま意識が戻るかどうかは怜くん次第と担当医からは聞いています。外部からかなり強い衝撃を頭部に受けたのか、ここに運び込まれた時には既に意識はなく、顔も頭も腫れた状態でした」 「っ……!」  よほどの暴力を受けたのだろう。大きな鼓動が一司の胸を突き抜けた。激しいショックのなか、看護師は更に詳しく語った。 「頭蓋骨陥没骨折に、脳挫傷に急性硬膜下血腫を起こしていたため、緊急の開頭手術を行いました。脳の損傷が今後どのような影響を及ぼすか、わかりません。現在は投薬で炎症や脳の腫れを抑えている状況です」  淡い期待は裏切られた。 「そ、そんな……!」  顔面蒼白となった牧野の身体がふらついた。一司は咄嗟に彼女の肩を支えた。
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