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「だって、おかしいじゃねぇか。お前はゲイかもしれねぇけど……俺は違う」
関係を切るために出た言葉は、同性愛に対する否定だった。それが一番、手っ取り早いと思ったからだ。
「それがどうしたの?」
「……え?」
「それがどうしたのって聞いてるの。そんなの、最初からわかりきってるじゃない」
何も問題にもならないと言った風に神谷は腕を組んだ。
「どうしたもクソも……俺はストレートだ。もう、こんなのは嫌だって言ってんだよ!」
「そう……じゃあ、EDは治ったの?」
語気を荒げる一司へと神谷は冷静に尋ねた。
「い、今はそんな話をしてねぇ!」
話題を逸らすなとかぶりを振った。
「何を言ってるの。かずちゃんのアレが勃たないから、この関係が始まったんじゃない……そこ重要よ」
「それは、そうかもしれねぇけど……やっぱり、こんなのは変だ」
言い切って視線を床へと落とすと……。
「……かずちゃん。もしかしてあたしの事、本気で好きになっちゃった?」
確信からか神谷は自信たっぷりに尋ねた。
「ふ、ふざけんな! 誰がお前なんか……」
好きになるものか……。
そう言いたいのに、言えない。本心を突かれて一司は口を結んだ。
この恋は認めてはいけない。これ以上、傍にいると神谷を汚してしまう。彼の生き方に泥を塗るようなものだ。耐えられなかった。
「……いい加減に素直になんなさいよ。ゲイが嫌だって言っても説得力、皆無よ。あたしに弄られてあんなに悦んでたくせに」
いつものように揶揄ったあと神谷は豪快に笑った。
重苦しい空気など全く感じさせない。惑う一司を受け入れようとしていた。眩しいまでの包容力に心はグラついた。
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