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このままではいつまで経っても話は終わらない。想いを断ち切るために一司は言った。
「俺、明後日の日曜日、前の嫁と子供たちと一緒に出かけるんだよ」
「……え?」
神谷の顔から笑顔が消えた。強い動揺を感じるのには十分だった。
「この前、子供たちと久し振りに会ったんだよ。離婚してから面会は断ってきたけど、俺を見た瞬間に二人とも凄く喜んでさ……また会いたいって言ってんだって」
早口で伝えた。一司の話を神谷は静かに聞いていた。
「離婚はしたけど、俺は父親なんだって改めて認識した。子供たちの言葉が嬉しいって思った……」
嘘はない。あえて本心を打ち明けた。
「……それが、どうして関係を終わらせることに繋がるの?」
子供の存在をチラつかせも神谷に引く様子はなかった。もう直接的な科白しかない。一司は決めた。
「子供たちにバレてないとはいえ、父親が男に身体を弄ばれて善がりまくってたら気持ち悪いだろ」
自分で発した言葉が胸を締め付けた。心臓が痛い。それでも一司は傷つくこと選んだ。
「子供にも顔向け出来ねぇし……俺自身が我慢ならねぇんだよ!」
子供を理由に使うなんて卑怯だ。わかっている。だからこそ口にしたのだ。
本当は叫びたい。神谷が好きだと正直に告白したい。それを苦渋の思いで飲み込んだ。神谷はただじっと一司を見つめていた。
二人の間に沈黙が流れた。この辺で終わらせよう。一司は深く息を吸った。
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