心が叫ぶ

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「……お遊びは終わりだ。もともとこの関係はゲームみたいなもんで、恋愛は必要ないんだ。神谷もそう思うだろ……っ⁉」  言葉を遮るように右手首を掴まれた。 「かずちゃんは……人の気持ちを何だと思ってんだっ!」  怒気の孕んだ声を神谷が発した。彼の瞳は悲しげに揺れていた。 「離せよ……っ!」  見ていられない。一司は視線を逃がして腕を我武者羅に動かした。それでも手は離れなかった。指先が食い込むほど力を入れられた。 「俺は、かずちゃんの事が好きだって言ったよな。ゲームなわけあるかよ……ふざけるな!」  いつもなら一司が言うような科白を神谷は言った。  彼は訴える。 「教えてくれよ……かずちゃんの本当の気持ちはどうなんだ? 隠す必要なんて無いだろ」 「っ……隠してなんかねぇよ!」 「嘘だ!」 「嘘じゃねぇ……さっきのが本心だ。子供たちに会う前に、この関係を……こんな気味の悪い関係を清算したかったんだっ‼」  腹の底から叫んだ瞬間、神谷の目がハッと見開かれた。 「……酷いな。子供の話をされたら、俺が何も言えないことを、かずちゃんはわかってるだろ?」  消沈した声だった。傷付いた顔をしていた。それを隠すようにして神谷は自らの目元を片手で覆うと……。 「……かずちゃんは、本当に人を傷つけるのが上手だ」  ははっと、笑われた。  その言葉は一司の胸を深く抉った。だが、それ以上に神谷はショックを受けている。 「……っ、神谷……俺はっ」  やってしまった。二度と人を傷付けないと決めたのに、一番大好きな人に言葉の暴力を振るってしまった。しかし、後悔しても遅い。それを選んだのは他でもない、一司自身だ。 「……わかったよ……終わりにしよう」  神谷は目元から手を離した。悲しい笑顔で終わりを受け入れていた。息が止まりそうなほど、一司の胸は締め付けられていく。
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