※雨の中の二人

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「お前ってオカマで変態だし、いきなりキスしてくるわで、俺からしたら信じられないくらい、おかしな奴だった……」  出会いの印象を正直に告白した。 「ちょっと、かずちゃん。久々に会ってそれは酷いんじゃない?」  それを聞いても神谷は怒りもせず笑っていた。優しいこの男が心底好きだと、一司は思い知った。 「……何でお前なんかに、出会ってしまったんだろうって思ってた」  思っていたはずだった。  全てリセットしたい。そう願っていたはずなのに、いつしか一司にとって神谷はかげがえのない存在に変わっていた。 「でも、お前と一緒にいればいるほど心が満たされた。こんな俺を、お前は全部受け止めてくれた……」  溢れる言葉と想いがぐちゃぐちゃに絡まっていた。降りしきる雨のなか、一司は吐露し続ける。 「神谷、俺は、最低でクソでクズで、どうしようもない奴だ……」 「かずちゃん?」  自らを罵る一司を心配したのか、神谷が顔を覗き込んできた。しかし、視界がぼやけてよく見えない。これは雨じゃない。涙がそうさせたのだ。アスファルトに打ち付ける雨は足元をあっという間に濡らした。降り注ぐ冷たい雨が体温を奪う。髪も服も全身ずぶ濡れとなりながらも、二人は微動だにせず見つめった。 「自分の事しか考えて生きてこなかった俺は、それすら認められなかった。あれだけ、たくさんの人を傷つけても、見つめきれなかった……」  想いを吐き出す一司を、神谷はただじっと黙って見つめていた。 「でも、お前に会って優しさに触れた。一緒にいればいるほど自分の醜さを知った。汚れ切っている自分の心と生き方を痛感した。それは、お前があまりにも眩しくて、綺麗だからだ……!」  言い切った途端、涙腺は崩壊した。それを洗い流すのは、更に強く振り出した雨だ。 「そんなお前に、俺なんかが触れてはいけない。だから、関係を終わらせた……」 「触れては、いけない?」  どういう意味だと言いたげに、神谷は反応を見せた。
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