1529人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ、かずちゃん……かずちゃん」
一度、唇が離されて、乞うように名前を呼ばれた。
「か、神っ……んっ、ふっ…ん!」
応えようとしたが、すぐに塞がれた。
唾液を存分に含ませた分厚い舌が捻じ込むように侵入した。摩擦がはじまる。一司の舌は根元から引き千切る勢いで攫われた。ずずっと唾液と一緒に呼吸すら吸われた。今までにないくらいの熱欲を感じる動きだった。
(凄ぇ……っ)
まるで飢えた野獣だ。ついていけない。脳が眩み、身体の痙攣が始まった。それに気付いた神谷が大きな唾音を奏でながら唇をはがした。一司の開き切った口から泡立った唾液が零れた。
「かずちゃん、嬉しい……やっと手に入れた!」
「か、神谷……ちょっと、待ってくれ……っ!」
感極まって頬ずりをしてくる神谷を制したが……。
「もう待てねぇよ。どれだけ待ったと思ってんだよ」
「――っ!」
余計に火を点けてしまったようだ。雄の眼差しとともに、ストレートな欲をぶつけられた。
わななく一司に神谷は別れの夜のことを切り出す。
「本当は諦めようとしてたの。あの夜、かずちゃんが言ったことが本心なら身を引くのも大事だって。でもね、やっぱり忘れられなかった。毎日、かずちゃんのことを想ってた……」
悲しげな表情で辛い胸の内を明かされた。
毎日……それは自分も同じだ。一司は潤んだ目を細めた。
「……神谷、悪かった。傷付けて、ごめん……俺もお前のことばかり考えてたよ」
「謝らないで。かずちゃんがあたしを好きになってくれただけで充分よ」
鼻先が触れ合った刹那……。
「……んぅっ」
唇がぐぅっと重なった。二人は首の角度変えながら抱き合い、情熱的な口づけに酔った。
「かずちゃん、あの約束、覚えてるだろ?」
濡れた唇が頬の上を滑り、耳朶へと移動した。熱い吐息が鼓膜を揺らす。
「んっ……や、約束?」
肌が粟立つ感触に一司は首を小さく反った。
最初のコメントを投稿しよう!