※雨の中の二人

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「ああ、かずちゃん……かずちゃん」  一度、唇が離されて、乞うように名前を呼ばれた。 「か、神っ……んっ、ふっ…ん!」  応えようとしたが、すぐに塞がれた。  唾液を存分に含ませた分厚い舌が捻じ込むように侵入した。摩擦がはじまる。一司の舌は根元から引き千切る勢いで攫われた。ずずっと唾液と一緒に呼吸すら吸われた。今までにないくらいの熱欲を感じる動きだった。 (凄ぇ……っ)  まるで飢えた野獣だ。ついていけない。脳が眩み、身体の痙攣が始まった。それに気付いた神谷が大きな唾音を奏でながら唇をはがした。一司の開き切った口から泡立った唾液が零れた。 「かずちゃん、嬉しい……やっと手に入れた!」 「か、神谷……ちょっと、待ってくれ……っ!」  感極まって頬ずりをしてくる神谷を制したが……。 「もう待てねぇよ。どれだけ待ったと思ってんだよ」 「――っ!」  余計に火を点けてしまったようだ。雄の眼差しとともに、ストレートな欲をぶつけられた。  わななく一司に神谷は別れの夜のことを切り出す。 「本当は諦めようとしてたの。あの夜、かずちゃんが言ったことが本心なら身を引くのも大事だって。でもね、やっぱり忘れられなかった。毎日、かずちゃんのことを想ってた……」  悲しげな表情で辛い胸の内を明かされた。  毎日……それは自分も同じだ。一司は潤んだ目を細めた。 「……神谷、悪かった。傷付けて、ごめん……俺もお前のことばかり考えてたよ」 「謝らないで。かずちゃんがあたしを好きになってくれただけで充分よ」  鼻先が触れ合った刹那……。 「……んぅっ」  唇がぐぅっと重なった。二人は首の角度変えながら抱き合い、情熱的な口づけに酔った。 「かずちゃん、あの約束、覚えてるだろ?」  濡れた唇が頬の上を滑り、耳朶へと移動した。熱い吐息が鼓膜を揺らす。 「んっ……や、約束?」  肌が粟立つ感触に一司は首を小さく反った。
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