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「……ねぇ、かずちゃん。やっぱり痩せたわよね?」
心配そうな面持ちで神谷は肉じゃがを盛った皿をテーブルの上に置いた。
「そうか? あんまりわかんねーや」
激しく抜き合ってからの食事だ。用意された部屋着に着替えた後、一司は席に着いた。
(お……美味そう)
出汁を存分に染み込ませたホクホクのじゃが芋と人参。くし切りの玉ねぎもほどよく煮込んである。牛肉と糸こんにゃくもいい感じだ。彩のために絹さやも添えてあった。
神谷の得意は料理だ。訪れる度に、彼は必ず一司のために、腕を振るってくれる。
(これがなぁ、やめらんねーんだよ)
性の発散もあるが、何よりお気に入りなのは神谷の手料理だ。驚くほど腕がいい。プロの料理人も顔負けだ。ちなみに得意料理は和食全般だ。
一司は緩む頬を我慢して、肉じゃがを頬張った。
「お味はどう?」
向かい合わせに座る神谷が顔を覗き込んできた。
「悪くねーよ」
ぶっきらぼうに答えて、次は具だくさんの味噌汁を啜った。美味い。疲れた体に沁みた。一司は一口二口と、味わった。
「ふふっ、美味しい? いっぱい食べてね」
柔らかな笑みを向けられた、流石に食べるだけでは悪い。神谷も仕事で疲れているはずだ。メンズブランドショップで店長を務める彼だ。新規オープンした東京店は毎日繁盛だと聞く。
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