※ありがとう

2/11

1526人が本棚に入れています
本棚に追加
/267ページ
「……腰が痛ぇ」  週明けの月曜日。  一司は出勤するなり、腰痛を訴えながらデスクに突っ伏した。腰だけじゃない。全身の筋肉も痛くて仕方がない。なにより一番酷いのは尻孔の違和感だ。原因はもちろん……。 (神谷の奴、人の身体を滅茶苦茶にしやがって……!)  この度、晴れて恋人となった神谷竜二以外にいない。    雨が降りしきる金曜日の夜。やっとの想いで気持ちを伝え、身体を重ねた。愛欲に溺れるまま二人は明け方まで熱情を交わした。いや、違う。最後の方は好き勝手に貪れた。 (あいつの性欲どうなってんだよ……)  強い疲労が残るなか、神谷とのセックスを思い返す。  記憶は朧気だが、何回目かの行為で一司は体力の限界を訴えた。しかし、聞き入れられなかった。神谷は力なく横たわる一司を暴走する性欲のまま揺さ振った。後ろや横、真上、様々な角度から貫かれて身体の奥に熱精を撃たれた。  限界だと口にしながらでも一司は快感を得ていた。喉が潰れるほど淫らに喘いだ。汗なのか、それとも放った白濁なのか。何が何だかわからないほど全身はびしょ濡れだった。果ての見えない快楽は意識が完全に途絶えるまで続いた。  迎えた土曜日。  一司が目覚めたのは昼過ぎだった。あれだけ激しい行為だったのにも関わらず、身体は綺麗に清められ部屋着を身に纏っていた。  仕事に行ったのだろう。神谷の姿は既になかった。リビングのテーブルには置手紙と一緒にスペアキーが置いてあった。外に出るなら使えということだろう。手紙には簡単ではあるが冷蔵庫に作り置きがあると書かれていた。その手紙を読むだけで一司の胸はあたたかくなった。  シャワーを浴び、食事を摂った後、怜に会うためタクシーを使って病院へと向かった。怜の意識はないままだった。いつものように語りかけをして、また明日来ると言い残して病室をあとにした。このまま帰宅してもよかったのだが、やめておいた。結ばれたばかりだ。話したいことはまだたくさんある。一司はマンションへと戻ったが……この選択が間違いだったのだ。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1526人が本棚に入れています
本棚に追加