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「どうしたんですか。そんなに慌てて……」
眉を顰めたところで、牧野は切羽詰まった様子で言った。
『今、病院にいるんだけど、怜くんが……っ!』
「怜がどうかしたんですかっ……⁉」
ドクンと鼓動が強く打った。床を蹴るようにして椅子から立ち上がった。嫌な予感に全身が震えていた。
『怜くんが、目を覚ましたのよ!』
「……え」
『今、担当の先生が診てくれているわ。本当によかった……大槻さんの想いが届いたのね……』
電話の向こうで牧野は泣いていた。
「っ……」
一司の瞳も熱をもった。早く会いに行きたい。逸る気持ちでいる一司に一ノ瀬が手でジェスチャーを送った。行ってきていいわよ、と。
「……今すぐ向かいます!」
そう告げて、局を飛び出した。
タクシーを使って病院に到着した一司は小児病棟へと急いだ。怜の病室前には牧野が立っていた。
「牧野さん!」
「ああ、大槻さん!」
駆け寄る一司に牧野は涙を零した。
「ほんと……ほんとに、良かった」
声も身体も全部、震えていた。牧野も怜を守れなかった自責の念に苦しんできたのだ。
「怜は、どんな感じですか?」
「取り乱してごめんなさいね、つい安心しちゃって……もうすぐ先生の診察が終わる頃よ」
牧野が涙目で微笑んだところで病室の扉が開いた。出てきたのは男性の医師と女性看護師の二人だった。
「先生、怜くんは……!」
尋ねる牧野に医師は説明した。
「意識は回復しましたが、言語の反応が若干鈍いです。この後、容体を見ながら精密検査を行います」
覚悟はしていたが、やはり後遺症は残るようだ。一司と牧野は顔を見合わせてショックを露にした。
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