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「……お前、オカマで変態だけど料理だけは抜群だよな」
今の一司にとっては最大限の褒め言葉だ。
「相変わらず一言多いわねぇ……」
やれやれと言った風に溜息を吐かれたが、見つめる瞳はどこまでも優しくてあたたかい。
「なんだよ……気持ち悪いな。お前は食わないのかよ」
眼差しに耐えられなくなって箸を進めた。
「食べるわよ。でも、かずちゃんがあまりにも可愛くて、つい見ちゃうの」
また始まった。次は一司が嘆息を漏らした。
「……お前さ、俺より五歳も年下だろう? 三十も過ぎたバツイチ男のどこを可愛いって言うんだよ、目ぇ腐ってんのか?」
血迷っているとしか言いようがない。女みたいな容姿をしているわけでもない。可愛いなんて科白は、ちっとも嬉しくない。
「腐ってないわよぉ。かずちゃんは性格悪いけど、可愛いの!」
「なんだそれ……」
はっと鼻で笑ってから、人参を放り込んだ。
「かずちゃん、今夜は泊まっていく? お風呂用意してあるわよ。あと、この前のワイシャツもアイロンかけてあるから。寝る前はマッサージしてあげるわね」
「……そいつは、どうも」
至れり尽くせりだ。最近では泊まることも増えてきた。散々抜いて、食事までご馳走になっている。身体は完全にリラックスモードだ。
父、一仁の監視も夏頃から緩くなり、プライベートにも口を出さなくなった。とはいっても気は使う。下手なことは出来ない。心身の鍛えは現在も継続中だ。
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