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「たった二人きりの兄弟じゃない。仲良くしなさいよ。それに同じ道に走っちゃったじゃない」
やれやれと言った風に溜息を吐かれた。しかも嫌なところを突いてくる。
「言っとくけどな……お前との関係を一哉に言うつもりはねぇよ!」
そればかりは心に固く誓っていた。
あれだけ同性愛に嫌悪してきたのだ。周りを振り回し傷付けてきたのだ。悪いことをしたと反省はしている。だが、これは別問題だ。神谷は橘結人の親友だ。どんな顔で紹介出来るというのか。考えるだけで一司の胃はキリキリと痛みだした。
万が一知られたとしよう。一哉には一生厭味を言われ続け、両親にも顔向けできない。
兄弟揃って男をパートナーに選んだのだ。母に至ってはいよいよ卒倒するかもしれない。彼女も最近では一哉の交際に関して少しずつ理解を示してきているようだが、抵抗は残っていると聞く。全てを受け入れるのには、まだ時間を要するだろう。
「もしかして一生言わないつもりなの?」
「一生だ!」
力強く言い切ったが、神谷も簡単には引かない。
「一哉さんならきっとわかってくれるわよ。かずちゃんと違って、とーっても大人で器も広いんだから。それに隠し通すなんて、さすがに無理があるわよ」
何気に失礼なことを口にしてくれる。一司は頬を膨らます恋人を睨み付けた。
「とにかく絶対に言うな! 言ったらセックスも一生しねーからな」
ツンとそっぽを向いた。固い意志を受けて神谷も折れたようだ。
「もーう、わかったわよぉ。本当に我儘なんだから……っん」
不満を零す唇を一司は口付けで塞いだ。
「そんな我儘な男を先に好きになったのは、お前だろ?」と言って。
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