この面子にちょっと待った

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 鍋が煮えるまでの間、四人はテーブルを囲みながら神谷中心に話を進めていった。  彼は身体の触れ合いから関係が始まったとは一切言わず、馴れ初めを明かした。偶然の再会が何度も重なり、気が付けばよく会うようになり。お互いを好きになったと。 「……なるほど、これで納得したよ。春頃から兄さんの様子がおかしいと、お父さんも言っていたからな。俺もずっと引っ掛かっていたんだ。兄さんが電話で『神谷』って呼んでいたからな」  全てを聞いた後、一哉は向かいの席に座る一司をチラリと見遣った。智史と陽菜と久し振りに面会した日の事を言っているのだろう。 「お前……やっぱりあの時、盗み聞きしてやがったな!」  眉間に皺を刻みながら掌でテーブルを叩いた。 「してませんよ。ただ、楽しそうに電話をしているなと思っていただけで」  不機嫌を露にしても一哉は全く動じない。寧ろ、さっきからずっと口端を上げて笑っている。この状況がおもしろいとでも言いたのだろうか。    一方、隣に座る結人は緊張の面持ちだ。一司に対して怯えも残っているのだろう。彼は一言も喋らず石のように固まっていた。あの一件を示談したとはいえ、彼の中で一司は許されない存在だろう。 (こんなの、どうしろっていうんだよ……)  大きな嘆息を漏らしたところで、神谷はこの忘年会を開いた理由を明かした。 「ごめんね、かずちゃん。これから先のことを考えたら、やっぱり一哉さんたちには知らせるべきだと思ったの。どう考えても隠し通すのは無理があるわ。それだったら早いことクリアにしたかったの……」 「それはお前の我儘だろ……いくらなんでも、急すぎる!」  心の準備など全く出来ていなかった。苛立った口調で神谷を責めると、一哉がフォローを入れてきた。 「神谷はきっと、兄さんの事を思って俺達を呼んだんだ。それに、二人の関係をおかしいとも思わないし、馬鹿にするつもりもない」 「え……?」  意外な言葉に一司は瞳を瞬いた。
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