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(まったくもって面倒くせぇ……)
泊まりと決まったら連絡だ。心で愚痴りながらスマートフォンを手に取った。父に外泊することを伝えなければならない。縛りを許した分、課せられた約束だ。一司はアプリトークを打った。既読になったと思いきや『了解』とすぐに返信がきた。
これで心置きなく宿泊コースだ。一司はスウェットのポケットに端末を突っ込んだ。
「かずちゃん、無理しないでね。異動してから大変そうだもの」
またしても心配を向けられた。
「ああ……」
一司はそれをサラリと受け流して食事を続けた。そんな気配りは無用だ。煩わしいだけだ。それなのに、どうしてか心が揺らいだ。
(何に……?)
こんな、ふざけた関係に心を反応させる必要もない。
これはゲームみたいなものだ。快楽を共有するだけのお遊びだ。ゲイの神谷にとっても自分は悪くない遊び相手に決まっている。
だから「ありがとう」なんて、口が裂けても言わない。絶対に惚れない。同性愛なんて死んでもごめんだ。一司は波打つ感情を無視した。
「……ねえ、知ってた?」
神谷が頬杖を突きながら尋ねる。
「何が?」
「かずちゃんってね、イク時の顔がいちばん可愛いの! ねえ、次はいつ来てくれる?」
「……本当にきもいな、お前」
突っ撥ねた。こんな男、大嫌いだと強く言い聞かせた。
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