この面子にちょっと待った

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 どうやら交際については歓迎しているようだ。同性愛など気持ち悪いと罵ってきた兄を彼は認めようとしていた。驚き顔でいる一司に一哉は優しく微笑んだ。 「……気持ち悪いな。笑うなよ」  ゾッとして、一司は思ったままを口にした。 「兄さんの、そういうところ本当に昔から変わりませんね」 またしても笑われた。 「うるせーほっとけ」  鬱陶しい。一司は腕を組んでフイと顔を逸らした。 「ねえ、一哉さんも結ちゃんも、あたしとかずちゃんのこと吃驚はしなかったの? 本当に、反対する気持ちもないの?」  ここで神谷が率直な疑問をぶつけた。先に答えたのは一哉だった。 「正直、驚きはした。でも、二人がお互いを尊重し愛し合っているのなら何も問題はない。結はどうだ?」 「うん。お互い愛し合っているのなら、いいと思う」  同じ意見なのだろう。結人も頬を染めて頷いた。 (どうして、お前が照れるんだ……!)  恥ずかしいのはこっちだ。一司は肩をフルフルと震わせた。それを知ってだろうか。一哉はあえて同じ科白を連呼する。 「兄さんが神谷を心から愛している……いいことだと思いますよ。性別を越えた愛を知ったという事でしょう? 神谷と出会って初めて気づいた本当の愛を弟として応援しますよ」  もう我慢ならない。一司はテーブルに両手をついて立ち上がった。 「さっきから愛、愛、愛って……そんなクソ寒い科白、何回も言うな!」 「やだ、かずちゃん、あたしのこと愛してないの⁉」  椅子に座ったままの状態で神谷が一司の腰に両腕を回した。 「なんでそうなるんだよ! 話がややこしくなるだろ!」  いちいち面倒くさいリアクションだ。一司は巻き付く腕を振り解こうと身体を左右に振った。しかし、神谷は全く離れない。密着を深めてギリギリと腰を締め付けてきた。
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