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お開き後、一司は神谷に引き摺られるようにして外へと連れ出された。正面玄関まで、一哉と結人の見送りに付き合わされたのだ。自動ドアを抜けて歩道に出ると厳しい冷気が襲った。真冬の深夜二時。骨にも沁みる寒さだった。一司は肩をすぼめながら腕を組んで暖を取った。
「二人とも、今日はありがとう。気を付けて帰ってね」
「こちらこそ、ありがとう。キムチ鍋も美味しかったし、久し振りに神谷さんの手料理を食べれて嬉しかった」
「もう、結ちゃんったら、相変わらず可愛いこと言ってくれるんだからぁ」
ほろ酔い気分なのか神谷が結人へと抱き付いた。こういったスキンシップを二人はよく交わしてきたのだろう。一司は改めて仲の良さを知った。
「神谷、兄さんをくれぐれもよろしく頼む。あまり甘やかさなくていいからな」
抱き合う二人を眺めながら一哉は言った。まるで躾のなっていない我が子を頼むような口振りだ。
「もちろん、任せておいて!」
「おい、一哉。弟のお前が言う科白じゃねーだろ!」
「兄さんの性格を知ってるからこそ、心配なんですよ。とにかく迷惑をかけないように」
手袋をはめた手でビシッと指を指された。
「な、なにぃ⁉」
それが兄に対する態度かと抗議の声を荒げたが……。
「結、行こうか。神谷も兄さんも、よいお年を」
一哉はそれを無視して結人の腰に腕を回した。まるで宝物を扱うような仕草だ。身を委ねるようにして結人も一哉に寄り添った。
「ええ、よいお年を。また遊びに来てね!」
神谷が笑顔で手を振った。背を向ける直前、二人は幸せそうに微笑むと、ゆっくりとした足取りで帰っていった。
(いいのか、俺……このままで)
寄り添う後姿をじっと見つめながら一司は葛藤していた。
今、言わないでいつ言うのだ。一哉の目を気にしていたら何も出来ない。自問自答しながら唇を強く噛んだ。
「……言ったでしょ? 一哉さんなら大丈夫だって……ちょっと、かずちゃん⁉」
気が付けば駆け出し二人を追いかけた。一司は結人の腕を後ろから引っ張るようにして掴んだ。
「……っえ⁉」
小さな悲鳴が上がる。結人の足元がぐらついた。バランスと整えようとしたのだろう。後ろを振り返った彼と目がしっかりと合わさった。チャンスは今だ。勢いをもって言ってしまおう。一司は声を振り絞った。
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