ずっと一緒にいたい

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「う……あ、ご、ごめ……」  まずい。本能で覚って謝りを入れようとしたが、神谷の怒気に圧されてうまく発せれない。 「……年末年始は思う存分一緒に居れなかったから、次に会えるのを楽しみにしてたんだ。それが何だよ……あんなの見せられてさ……」  さっきとは打って変わって静かな口調だった。それが余計に怖かった。 「だ、だから、特別な想いがないなら、大丈夫じゃねぇか……」 「それはかずちゃんだろ? マスターは絶対に違う。諦めたように見せかけてるだけだ」  そう言われたらもう何も言えない。俯く一司に神谷は続けた。 「大体さ、かずちゃん、いつになったら一緒に住む決心がつくんだよ」 「え……?」 「俺は、かずちゃんとずっと一緒にいたいのに……ひと時も離れたくないのに」 「その話は今、関係ないだろ。付き合ったばかりで段階すら踏んでない……」 「段階って、ご両親への報告とか?」  核心を突かれた。ここで下手に気持ちを隠すと、お互いの感情を拗らせてしまう。 「そうだ……だって俺は……っあ⁉」  認めて頷くと片方の手首を奪うように取られた。神谷はそのまま寝室へと突き進み、一司をベッドへと放り投げた。マットレスが大きく軋んだ。 「っ、神谷……⁉」  背中から倒れ込んだ一司の身体を神谷は長い手足で囲んだ。薄暗い空間で彼は切なげに微笑んだ。 「……俺、こんな成りだから、もしかして紹介するのが恥ずかしい?」 「そ、そんなわけねぇだろ……!」  自虐的な科白に一司は焦った。 「じゃあ、どうしてこれからのことを、もっと考えてくれないんだよ……」 心外だ。そんな風に思われていたのかと一司の胸に痛みが走った。だが、感情で返してはいけない。 「……考えてないわけねーだろ。それに今更、恥ずかしくもなんともねぇよ。俺だって本当は早く一緒に住みたい」  深く息を吸ってから、一司は秘めた想いを吐露した。
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