ずっと一緒にいたい

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「……かずちゃん」  神谷の目が見開かれた。強張っていた表情も柔らかさを取り戻した。 「お前とずっと一緒にいたいから、両親が俺の事を改めて認めるまで、待ってて欲しいんだよ……」  それこそが一司の本音だった。  離婚してまだ一年だ。局の仕事も半人前で、大きな結果を残せていない。自分の行動を見つめ、気持ちを改めたと言っても目に見えなければ伝わらない。神谷をパートナーに選んだ以上、仕事も私生活も今まで以上に努力し、両親の信頼を得たかった。いや、そうしなくてはいけないのだ。心を磨き生きていくのは、簡単なようでいて難しい。しかし、牧野は言ってくれた。あなたなら生まれ変われる……と。 「俺、色々やらかしてきたしな……真面目に生きる姿勢を見せないと何もはじまらない。その上でお前との関係を両親に認めてもらいたいんだよ。一緒に住むのは、それからだ。ちょっと時間がかかるかもしれない……うぐっ⁉」  言葉の最後は強い抱擁で止まった。 「ああ、かずちゃんっ……そういう事だったのね!」  強い決意に感極まったのか、神谷は腕に力を入れてきた。一司の身体がギリギリと圧迫されていく。 「く、苦しい……って!」  呻くと抱き込む力が緩んだ。 「かずちゃん、ごめんね。一瞬でも疑っちゃって、焦っちゃって……あたしのバカ!」 「……いや、俺も言葉が足りなかった」  素直に自分の非を認めて大きな背に腕を回した。 「かずちゃん、愛してる……もう、好きで好きで、愛し過ぎて爆発しそう!」 「爆発ってなんだよそれ……」  大袈裟な言いぶりに笑いが噴き出た。
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