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反論や言い訳などアウトだ。説教が長引くだけだ。一司は学んだ。こういう時は無を貫いたらいいのだ。右から左に流して聞いた振りをしたらいい。そうすれば、いちいち苛々しなくて済む。
(俺、毎朝の座禅で、仏の境地ってやつ拓いたんじゃね?)
精神を叩き直して鍛える為と、離婚後、毎日父に無理やり付き合わされた行いが、いよいよ効果を発揮してきている。思わず鼻で笑った。そんな一司に「聞いてるの!」と、一ノ瀬の一喝が飛んだ――。
***
児童相談センター。
簡単に説明すると、児童福祉法の規則で各都道府県の設置された「児童相談所」のうちの一つを、中心的な施設として設ける必要がある。東京の場合は新宿区にあるこの児童相談センターを「中央児童相談所」として位置づけられている。
中心といっても、全東京の児童相談を担うわけではない。そこは各自治体の仕事だ。要は、各所に点在した相談所と都を結ぶのが児童相談センターの役割だ。一司が所属する保健福祉局の児童相談センター課は、そこの事務仕事や調査をメインとしている。
午後いちで、一ノ瀬と一緒に局を出た一司は、センターに到着するなり会議室へと通された。
部屋では数名の児童福祉司と、児童虐待対応協力員が真剣な面持ちで協議を進めていた。虐待対策の中核メンバーだ。
増加の一途を辿る児童虐待の体勢強化を図ることを目的に、彼等は日々奮闘しているそうだ。コの字型に設置された会議テーブルの上は、資料で埋め尽くされていた。
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