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「怜くん、どうしたの?」
黙った怜を心配したのだろう。拓望が顔を覗き込んできた時だった。
突然、部屋の灯りが消え、薄暗い空間へと変わった。急な出来事に子供たちが、どよめきだす。電気が消えたと言っても、部屋の中心にある大きなツリーは光ったままだ。完全に真っ暗というわけではない。プレイルームの様子はかろうじて見渡せる。
(いったいなに……?)
状況を掴めずに辺りを見渡していると、クリスマスミュージックと重ねるようにしてベルの音がシャンシャンと鳴り、両開きの扉が開け放たれた。
「「メリークリスマース‼」」
大きな声が響き、パッと灯りが点いた。
現れたのは真っ赤な服と帽子に、白い髭がトレードマークのサンタクロースと、トナカイのコスチュームを着た二人組の男性だった。わあっと、プレイルームに歓声が轟いた。
「今日はサンタさんがトナカイさんに乗って会いに来てくれましたよー!」
田島が知らせると、更に大きな喜び声が上がった。主に騒ぐのは幼児組と低学年メンバーだ。
サンタとトナカイが手を振りながらツリーの前へと移動する。ここでわかったのはトナカイがとてつもなく大きいという事だ。サンタ役も背が高い。しかも手足が長く、スリムな体型をしている。本やテレビで見るような小太りサンタではなかった。子供たちは目を爛々とさせながら二人の動きを追った。
ここでサンタ役の男が、しゃがれた声を演じて口を開いた。
「ごほんっ……メリークリスマス! 今日はみんなにプレゼントを持って来てやったぞ!」
プレゼントと聞いた途端、椅子から立ち上がってジャンプする子や、手を叩いて喜びを表現する子もいた。怜も笑顔を弾けさせ、隣の拓望と目を細め合った。
ツリーの前で田島とサンタが何かを話し合っている。今から順番にプレゼントを渡すようだ。田島は学年別に分かれてから番号順に並ぶよう呼びかけた。
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