番外編・ねがいごと

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 やはりそうだと、怜は瞬きを繰り返した。そして次にトナカイへと視線を送った。 (もしかして……神谷さん?)  被り物で顔は見えないが、怜の目線に応えるようにしてトナカイの首が小さく傾げられた。神谷だと確信した怜は、二人を茫然と見つめた。 「怜、メリークリスマス。今夜は美味いものいっぱい食べろよ」  次の子の順番がきたようだ。一司は怜の耳元で囁いたあと、頭を優しく撫でて席へ戻るよう促した。    椅子へと腰を下ろした怜の心臓は鼓動を速めていた。『ねがいごと』がひとつ叶ったからだ。会いたいと願った矢先、思いもよらない形で果たされたのだ。本音を言えば、もっと喋りたい。しかし我慢だと怜は言い聞かせた。一司は仕事で訪れているのだ。邪魔をしてはいけないと。 「怜くん、見て! 俺、野球のグローブだった! ちゃんとリクエスト通りだったよ!」  早速プレゼントを開けた拓望が、新しいグローブをはめて怜へと見せた 「わあ……かっこ、いい!」  野球好きの拓望にとっては最高のプレゼントだろう。怜も一緒になって喜んだ。周りの子どもたちも、届いたプレゼントにおおはしゃぎだ。 「怜くんも開けてみなよ!」 「うん、ちょ、っと、待ってね」  頷いた怜はリボンとラッピングを解いて、箱を開けた。サッカーボールだった。白い球体にブルーの星型パネル柄のそれは、お洒落でいて軽い。 「おお、すげぇ! 今度一緒に遊ぼうぜ!」 「うん! あれ……?」  ここで、箱の上に白い封筒が張り付けてあることに気がついた。『怜へ』と書かれていた。
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